第2章 葛藤
「………わかった。うん、そう。悪かったな、ほんと。」
ん………。
誰。
「うん、サンキュ。ああ、じゃぁな」
誰の、声………。
男の、人?
「!」
男!!
蓮っ!!
「………起きた?」
「………っ」
ガバッと、勢いよく起き上がれば。
濡れた髪の毛をタオルで拭きながら、蓮が、ぎしっとベッドを軋ませた。
「なにしてんの」
「帰るの!!」
てっきりなんにも着てないと思ってたけど。
ちゃんとワンピース、着てる。
蓮、が。
胸元の服をぎゅっと握りしめ、一瞬動きを止めた。
「………!!っ、ふぅ!?」
ふと。
急に顎ごと引き寄せられて
抵抗する暇もないほどに。
乱暴に重なった唇から流れてきたのは、冷たいお水。
反射的にゴクン、て、喉を鳴らせば。
「あんだけ泣きわめいたら喉カラカラだろ?」
飄々と、ペットボトルに口をつけながら、何事もないように言ってのけるのは、もちろん蓮。
「………っ」
もっと普通に。
ペットボトル渡すとか、ないわけ?
「?」
近いし。
シャワー浴びたばっかなんだろうけど、だからって上半身裸でいつまでいんのよ。
目のやり場に。
困る。
思い切り睨み付けてみるけど、表情から察するにたぶん全然、意図は伝わってなさそう。
「最低」
「そりゃどーも」
褒めてないし。
バックを拾い上げて。
足早に玄関を思い切り叩きつけるように、出た。
あんなとこ。
一秒だって長居したくない。
最低。
最低最低最低。
最低。
「…………っ」
誰もいないエレベーターに乗り込んで。
壁伝いに、座り込む。
一番最低なのは、あたしだ。
蓮は、美桜の彼氏、なのに。
最低。
絶対に流されちゃいけなかったのに。
何やってんだろ。
最低。
あんなやつ。
ずっと忘れられずにいたなんて。
だけど。
もっと最低なのは。
また蓮に会えてちょっとでも嬉しいって思っちゃってる、自分自身。
触れた蓮のぬくもりに、嫌悪すらしなかった、自分自身。
ほんと、最低だ。