第1章 最悪の再会
心地いい。
パーソナルスペースに、無理やり踏み込んでくることも、なくて。
…………モテる、だろーなぁ。この人。
「桜月ちゃん、時間は?」
「終電間に合えば、大丈夫……」
しまった。
これじゃ変な風に誤解、されちゃ……。
「あ、あの……」
慌てて否定しようと口を開く、けど。
「ならさ、この後バイト先行ってみない?」
「え」
この人は、言葉をそのまんま受け止めてくれる。
裏表なく、受け止めてくれる。
「はい!」
心地いい。
久々かもしれない。
誰かといて、こんな気持ちになったのは。
「良かった。俺さ、たまに顔出すんだけど、マスター喜ぶよ桜月ちゃん来たら」
「マスターか、懐かしいなぁ。」
「たまには顔出してあげてよ。あ、でもこっちまで来ないか。全然会わなかったもんね」
「電車で30分なんで、いつでも来ますよ」
「まじで?じゃ、さ、また会える?」
「はい。連絡ください」
………あ!!
「……でも橘さん、彼女、さんに」
「彼女?いないいない。ふられちゃったし」
「えぇ?別れちゃったんですか?勿体ない」
橘さんをふるなんて、そんな人がいるんだ。
「桜月ちゃんこそ、彼氏いないなんて勿体ないね」
「そんなことないですよ。あたしなんて、相手する人珍しいですし」
「そうかな。桜月ちゃん、かわいいのに。勿体ない」
「ぇ」
あ………。
フォロー、してくれてるのかな。
「ありがとうございます。橘さん、相変わらず優しいんですね」
「別に誰にでも優しくなんて、しないよ?俺」
「………」
社交辞令なのは、わかってるんだけど。
こーゆーの慣れてなくて。
正直返しに困る。
「ねぇ、桜月ちゃん」
「?」
立ち止まった橘さんに合わせて、振り返る。
すぐ近くの駅に電車が走り去って行く音が、して。
風が、通り抜ける。
「あのさ……」
風に靡く髪を押さえながら、橘さんの言葉を、待った。
刹那。
ドン、て。
誰かにぶつかった衝撃と。
腕を勢い良く引っ張られる、感覚。
「え?」