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桜月夜の、鎖

第5章 嫉妬





「…………」

やっぱ。
いざマンションの前来ると思い出しちゃうな。
何度か来てはいるんだけど。
気持ち的な、問題といいますか。


「桜月?」
「ぃや、なんでもない」


大丈夫。
あの時とは違う。


違う。


だって蓮。
指輪くれたし、
これ、あるんだもんきっと大丈夫だよね。


「…………そんなまじまじ見られっと」
「なんで」
「別に、もっといいもん買ってやれるし…………」
「ぇ、やだこれがいい」
「…………そんな安もんのがいい?」
「いい」

「…………そ」



んん…………。
どっちだこれ。
拗ねてる。
照れてる。
表情筋、もっと鍛えてくんないかなこの人。
わかりづらいんだよなぁ。





チン
て。
エレベーターが、止まって。
扉が開く。
エレベーターホールの先、突き当たりが蓮の部屋だ。
8年前はこの先曲がったところで。
女の人が部屋から出てくるのを見た。
蓮とふたり、親密そうな雰囲気に逃げだしたんだ。
あの時とは違う。
そう思っていてもやっぱり緊張する。
あの時の光景が、脳裏に焼き付いて離れてくれないから。




「あ」
「ぇ」


エレベーターホールを曲がったところで蓮が足を止めて。
視線の先へと同じように視線を向けた。



「蓮」


嘘。
あの時の。
女の人。
座り込んでいた部屋の前。
蓮を見つけると立ち上がって蓮を呼んだ。


なんで。
なんで…………。



無意識に。
蓮の腕をぐ、て。
掴んだ。



「桜月?」

「…………っ」


ああやばい。
デジャヴ。
吐きそう。



「顔色悪ぃな」
「蓮、何してんの寒いんだけど!早く鍵開けてってば」
「るせぇな。勝手に入ってろよ」


ポケットから出した鍵を放り投げて。
蓮が。
あたしを覗き込む。


「急にどうしたおまえ」
「え」


何。
だって鍵。
なんで。
なんであの人勝手に蓮の部屋、はいるの。
なんで鍵。
当たり前に渡すの。



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