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桜月夜の、鎖

第1章 最悪の再会


高校の頃バイト先の先輩だった彼、橘 甲斐。
卒業してバイトを辞めてからは、今日まで会うことすら、なかった。



「珍しいね、こんなとこで。なんか用だった?」
「え」
「ここ。俺の今の職場」

「…………ぇ」


「桜月ちゃんは?なんでこんなとこ?」
「あ……。ご、めんなさい。あの、ここ、あたし、卒業、生、で。懐かしく、て、ぁのだから」


どうしよう。
不審者に思われたよね。
だから橘さん、声かけてきたのかな。
焦れば焦るほど、言い訳ぽくなっちゃう。


「ご、ごめんなさい。今、帰ります」


「待って桜月ちゃん」
「え」
「せっかく久々に会ったんだしさ、ランチでもどうかな」
「え」
「それとも、懐かしの母校でも見てく?」
「い、いえ別にほんと、そーゆーわけじゃ、なくて」
「あ、ごめんね。そーだよね、急にランチ誘ったら彼氏さんに悪いか」
「いない、です。彼氏、とかそーゆーの」
「そうなの?じゃぁ、友達と約束?」


ぶんぶんと、首を横にふる。


「なら、久々に会ったんだしさ。付き合ってよ、ランチ。仕事終わりでお腹すいちゃってさ」
「………はい」



昔から。
そーだった。
この人は、人の扱い方が、上手。
相手を不快にさせない言葉使い。
柔らかい物腰、雰囲気。



この人は。
美桜に似てる。



昔からそう、思ってた。





「橘さんは………」
「ん?」


「なんでも、ないです」


いないわけ、ない。
だけど。
あたしなんかとランチ行ったところで目くじら立てちゃうような彼女さんなんかじゃ、きっとない。
わざわざ聞くことでもないんだ。
きっと。



「どーしたの?緊張してる?」
「………少し」
「なんで?昔馴染みじゃん。あー、ぇと桜月ちゃん、何食べたい?けっこうここら辺も新しいお店とか増えたんだよ。」
「あ、なんでも……」


なんでもいい、は、失礼だよね。
相手任せにしちゃってるってことだし。
ぇ、と。
食べたいもの。
好きなもの。
好きなもの。

…………。


「パスタ」
「ん?」
「パスタ、が、いいです」




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