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桜月夜の、鎖

第1章 最悪の再会




「あれ、どっか行くの?さーちゃん」



「………」




ごめん、美桜。
さすがにこの状況は、居づらくて。
出掛ける準備をして、階段を降りた。


「ごめん、職場の先輩に、誘われちゃって」
「えぇ?」
「ごめん美桜。ほんとごめん」
「だってお昼、作っちゃったのに」
「ほんっとーに、ごめん!!」


「ちょっとさーちゃん!!」



美桜の顔、今はちゃんと向き合う自信、なくて。
早足で玄関へ。
そのまま慌てて玄関を、閉めた。



あとでいくらでもお説教受けるから。



あたしにはちょっと、この状況重すぎる。



ため息ひとつ。
駅へと足を向けた。






ガタンゴトンて、揺られること30分。
無意識に足が向かったのは。
懐かしの校舎。

蓮と、出会った高校。


中学まではいつも一緒だった美桜とは、高校はわざと別のところを選んだ。
あの頃は。
美桜と比べられる日が嫌で嫌で。
あたしなりの、小さな意地と反抗だったんだと思う。
わざと。
美桜が入れないようなハイレベルな高校、選んで受験した。
美桜があたしを、追って来ないように。




「…………」




日曜日だから、当たり前のように門は閉まってる。
だけど。
すでに開花始めた桜がここからでも十分、キレイに見える。





『桜月、誕生日おめでとう』



桜の木の下で、初めて蓮にもらったネックレスは。
桜の花びらのネックレス。
サイドにキラキラと光る三日月が、並んでて。



「………」



今はもうなにもない、首もとをぎゅっと握りしめた。




あれは。
あのネックレスは。
8年前に川へと投げ捨てた、から。
今はもう、ない。





「…………桜月ちゃん?」




不意に呼ばれた、慣れない名前に。
振り返り相手を探す。
『桜月ちゃん』なんて呼ぶ相手、今はもう誰もいないのに。
そんな名前で呼ばれたのは、ずっと昔。
そう。
あれは。



「…………ぇ」



あれは。
あたしがまだ、高校の頃。
バイト、先………、の。




「たちばな……さん」



「やっぱり桜月ちゃんだ。懐かしいね、元気だった?」
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