一緒に灯台の光を灯し続けよう(アイナナ大神万理夢)
第2章 呼び方が変わって近付く距離
「さん、例の件ですが…」
大神さんが私の呼び方が変わった。
こちらは畏れ多くて大神さん以上の呼び方なんて出来ないが、イケメンオーラ溢れる輝かんばかりの笑顔と共に繰り出されるさん呼びは心臓に悪すぎる。
周囲の同僚も、自然とさんと呼んでくれるようになって、こちらも距離が近くなった気がして嬉しくなった。
そしてもう一つ。
ピロン♪
私の携帯に来る通知。『新着メッセージ』を開くと、相手はモモさんだったり、ユキさんだったりするのだ。
一日に最低一通は来るメッセージだが、多くは大神さんがユキさんのメッセージを無視する事が原因だったりする。
『またバンが既読無視してるんだ。返事が欲しいからちゃん聞いてくれる?^^』
そう、天下のトップアイドルのユキさんまでもが私をちゃんと呼ぶようになってしまった。
ユキさんのおかげで、大神さんに話しかける事が出来るので役得といえば役得なのかもしれないけど。
「あいつ、さんにくだらない事で連絡してくるのか」
私の報告に大きなため息をつくと自分のスマホを操作し始めて、直ぐに画面を閉じている。
「さんを巻き込むなって言ったのに。時間作るからまた四人で食事でも行かないかってきかれてたんだ。トップアイドルのクセに暇なのか?行きたくないなら遠慮なく言ってね。全力で断るから」
ユキさん相手に毒を吐いたり出来るのは大神さんくらいだと思う。怒られた事はまだないけど、怒らせないように気を付けよう。うん。
「いえ、お二人とお話しするのはとても楽しいですし、色々とタメになる事が多いです!」
是非ともそのお誘いは受けていただきたい!
なんといっても大神さんと仕事じゃない時間に食事に行ける機会なのだ。私が断るわけが無い。トップアイドルでも使えるものは使う。まぁ、Re:valeの二人は私の気持ちに気付いている気がしないでもないけど…。
「じゃあ、いつになるか分からないけど、行けるって返事しておくね」
「はい!お願いします!」
自分の席に戻る時にアイドリッシュセブン担当マネージャーの紡ちゃんと目が合った。彼女からはキリッとした目付きと力強いサムズアップが返ってきた。ありがとう。