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一緒に灯台の光を灯し続けよう(アイナナ大神万理夢)

第3章 行方不明の女子力


 
 お互いがさりげなく探って安心して。
 全然、両思いになった実感が無いけれど、私を見つめる大神さんのその瞳は確かに熱を帯びていて。その熱に安心して、私が微笑むと大神さんも甘く蕩けるような微笑みを返してくれる。
 
「さん。手が早い男だって思われたくないけど、キスしてもいい?」
 
 大人の余裕を取り戻せば、翻弄されるのはこちら。軽く添えられた大神さんの男らしい指先が顎にかかる。了承の意をこめて、目を閉じた。
 ゆっくりと大神さんの吐息が頬にかかったその時、
 
『ピンポーン』
 
 来客を告げる間の抜けた音が空間に響いた。
 大神さんの近づいていた顔が一瞬止まるが、また近づいてくる気配を感じて息を止める。
 
『ピンポーン』『ピン ピンポーン』
 
 再びチャイムが鳴った。それもふざけたように続いて。
 大神さんは顔を伏せると私をギュッと強めに抱きしめて離れていった。
 
「誰だ!」
「僕」
「す、すみません!何回も押さないように止めたんですが…」
 
 怒りながら開けたドアの向こうから聞こえたのは今をときめくRe:valeのプライベートな声。
 
「誰だって言いながら、僕たちだって気づいてたんだろ?」
「うちにこんな事しに来るのはお前くらいだからな……」
 
 諦めたように力ない声の大神さんの声が聞こえ、Re:valeの二人の姿が見えた。
 
「顔の赤い二人……ほら!やっぱり邪魔したんじゃんか!ユキ、帰ろうって!」
 
 私の顔を見るや否や慌てたように相方を引っ張るモモさん。無表情を一転、ニヤニヤした表情になるユキさん。そして、疲れた表情で壁にもたれ掛かる大神さん。
 一瞬で三人の関係がわかる構図だった。
 
「何しようとしてたの?バン。このスケベ」
 
 明らかに大神さんを怒らせようとしているユキさんの言葉に、案の定大神さんが怒った。
 
「さんの前で変な事言わないでください千さん。お帰りはあちらですよ」
「バ、バンさん…ごめんなさい!ほら、ユキ!帰るよ!」
「重要な事伝えてないじゃない」
「あとで電話で言ってもいいでしょ!ほんっとすみませんでした!」
 
 ペコペコと頭を下げるモモさんがユキさんを連れて出て行った。静寂が戻る。
 
「百くんも大変だな……」
 
 ポツリと呟いたその言葉に、私も自然と頷いていたのだった。
 
 
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