【モブサイコ100】その花の名前は。【島崎亮】【短編集】
第4章 花が散るにはまだ早い
あの人がいなくなってから一年が経った。
ボスである鈴木さんが捕まって爪が解体した後、組織にいた私たちはバラバラになった。かつては五超と呼ばれていた人たちも、今ではどこにでもいる一般人と何ら変わらない。無理やり組織に引き入れられた私は、取り戻された日常を淡々と過ごしていた。朝起きて、学校に行き、眠い目をこすりながら授業を受け、バイトをし、帰って、寝る。休日は友達と遊んだり、ショッピングしたり。そんなどこにでもいる大学2回生。両親には愛され、帰る場所も心の拠り所もある、何一つ不自由のない人生。超能力はあるけれど、そんなもの使わなくたって充分すぎるほど、私の人生は順風満帆だった。
なのに、私の心はあれから________________東京襲撃のあの日から、どこかに行ったまま帰ってこない。
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「島崎なら来てないよ。ていうか、『来たら連絡する』ってこの前も言ったはずだけど」
「ですよねー……はは、いつもすいません」
花の水やりを中断し、呆れ顔でこちらを見つめる目の前の男の人は、峯岸さん。かつては五超メンバーの一人だったけど、今は花屋さんで働いている。植物を操ることに長けた峯岸さんは、自由自在に花の成長速度を操れるから、店長さんからそれは重宝されているんだろうなぁ。
「いい加減諦めたらどうなの。あいつの事だからどうせ今もどっかで楽しくやってるよ」
「私だって、諦められたらとっくに諦めてますよ……」
ぐったりと項垂れる私に、峯岸さんは本日何度目かのため息をつきながら、「君も懲りないね。あんな奴のどこがいいのか、俺には全く分からないけど」と言った。
全く、峯岸さんの言う通りである。鈴木さんからの命令とはいえ、決して良心的とは言えない方法で私を攫い、組織の一員としてこき使ってきた人だ。本来なら、ようやくおさらば出来て清々するというものなのに、彼は私に決して消えることの無い傷を残して去っていった。
東京襲撃の日、島崎さんは忽然と姿を消した。どれだけ探しても彼を見つけることはできず、今に至る。いや、本来なら見つけようと思えば見つけられた。超能力者はエネルギーの流れが非能力者と違うから、島崎さん程のエスパーともなれば、見つけること自体は比較的簡単。
しかし、問題はその後だった。