【モブサイコ100】その花の名前は。【島崎亮】【短編集】
第2章 アネモネ
私の言葉の意味をようやく理解したらしい彼女は、私の服をギュッと握りしめたかと思うと、やがて顔をこちらに向けた。
「この髪の毛も、花飾りも、島崎さんに褒めてもらいたくてしたものだと言ったら、引きますか…?」
「……はぁ、全く。私をここまで振り回すことができるのは貴方ぐらいのものですよ」
おずおずと腕を私の背中に回す彼女を、今度は力いっぱい抱きしめた。
「私でいいのですか」
「島崎さんがいいです」
「貴方が私のために着飾っても、当の本人は見ることが出来ないのに?」
「私に触れて、感じて、"見て"くれてるじゃないですか」
「私といても幸せになれるか分かりませんよ」
「島崎さんがいない人生は幸せとは言えないです」
必死に彼女を繋ぎ止めようと回した腕とは反対に、私を抱きしめる彼女の声は優しかった。だから私も伝えたいんです。私の世界を照らす、たった一筋の光に。
「私を好きになってくれて、ありがとうございます」
アネモネの花言葉:良縁