第1章 夢で会ったキミへ
土方が一枚の紙を見つめる。
それは指名手配書。
"桂小太郎"と書かれた男の写真に土方が吐いた副流煙がかぶる。
「天人との戦で活躍したかつての英雄も、天人様様の今の世の中じゃただの反乱武士か」
『私思うんですけど…桂小太郎って、本当に間違ってるんですかね』
「オーイ、それ問題発言な」
『そりゃ…やり方は間違ってますよ。けど、この国が大好きだから…侍の国が好きだから取り戻したい。きっとそれだけなんですよ…』
「人の人間性で俺たちは捕まえるために追ってるじゃねぇ。お偉いさんの敵は俺たちの敵なんだよ。それが幕府の犬になるってことだ」
『……そんなの言われなくても分かってますよ』
土方の言ってる事は正しい。
達真選組は幕府の犬だ。成り行きで真選組に入ったでも、それなりの覚悟だってもう出来てる。
『だって…同じようにこの国が好きなのに』
——悲しすぎる
は言いかけた言葉をつぐんだ。それを伝えても如何にもならないとわかっていたからだ。これから奇襲をかける側のにとって、私情を挟むことは危険。それが自分だけならまだしも、仲間をも危険に晒すことにだってなりかねない
「はぁ…とにかく、この御時世に天人を追い払おうなんざァたいした夢想家だよ。オイ、総悟起きろ!」
グシャリと丸めた手配書を土方は沖田に投げた。気持よさそうに寝ている沖田の頭に綺麗に円をえがいた紙屑が当たり地面に転がる。
「お前…よくあの爆音の中で寝てられるな」
「爆音って…またテロ防げなかったんですかィ? 何やってんだィ土方さん。真面目に働けよ」
「もう一回眠るか コラ」
めんどくさそうに紙屑を沖田は掴み上げる。二人のいつもやり取りには呆れて息を吐き出した。
「まぁ…天人の館がいくらフッ飛ぼうが知ったこっちゃねェよ。連中泳がして雁首揃ったところをまとめて叩き斬ってやる」
(んん!?…ちょっと、この人私情挟んでね?私が私情挟むのはよくないとか思ってたのにこの人思いっきり私情挟んでね!?ただただ喧嘩したいだけじゃ…)
「真選組の晴れ舞台だぜ 楽しい喧嘩になりそうだ」
あぁ、やっぱり…。
予感が的中したは肩を落とすのだった。