第1章 夢で会ったキミへ
冬の凍てつく寒さから、春の足音が聞こえる。
裸になった木々の枝は緑の葉を着飾り、小さな蕾をつける。
『ふぁ~……ねむ』
ぽかぽかと暖かい陽気に誘われるように出た大きな欠伸を隠すこともしない人物。真選組特隊隊長 中沢。
長い紫帯びた黒髪を一本に結き、中性的な綺麗な顔立ちをしている。
長いまつ毛に覆われた目尻の涙を指で拭いながら、柱に寄りかかり痛くなかった体を伸ばした。
「オィ…上司の前で欠伸とはいい度胸だな?切腹してぇーのか」
『なぜ私だけ切腹?』
双眼鏡越しに睨む鬼を不満げに見上げる。
今真選組は世間を騒がしている大使館連続爆破テロの捜査の真っ最中だった。長い捜査甲斐があり、次に狙われるであろうと目星をつけていた犬威星の大使館を機密に張り込みをしていたのだ。
長い張り込みで体はガチガチに固まり、待てども変わらない状況に欠伸がでるのも仕方ない。
『嫌がらせですか?私よりもっと注意すべき相手が目の前に居ると思うんですけど』
「良ければ、腕の良い眼科紹介しますよ」と人差し指を隣に向けた。隣にアイマスクをつけ、よだれを垂らしながら眠る少年。
「部下の始末は上司であるてめーの始末だろーが」
『それを言うなら私の始末は土方さんの始末になりますけど』
「お前の始末はてめーの始末だ」
『なにそれほんと理不尽!!パワハラ!!』
の言葉も一刀両断。
あまりの理不尽な言いようだった。その時、二人の言い争いに水を差すように鳴り響く爆発音。
立て付けの悪い建物がぐらぐらと揺れた。
「とうとう尻尾出しやがった。山崎、なんとしても奴らの拠点を抑えてこい」
「はいよっ」
『や、山崎!!こわいこわいこわいッ揺れてるぅぅぅ〜ッ 』
目に涙を浮かべ沖田に捕まる。困ったように笑った山崎はの頭をあやす様に撫で部屋から出て行った。
山崎はに甘い。真選組局長の近藤もに甘い。
真選組皆、に甘いのだ。