第2章 思春期は理解不能
「さん」
──パシッ
いつの間に側に来ていたのか、それともパニックで私が気づかないだけなのか。総悟が私の手首を掴む。
「こっち見てくだせェ」
「む、無理無理無理!!ちょっとタンマッ」
「さん」
ぐいっと力を込められて呆気なく顔を隠していた手がどけられる。
確実に真っ赤になっている私の顔をいつもの真顔に近い平然とも真剣ともらとれる表情でただじっと見つめられる。
冗談を言っている様には到底見えなくて…自分の心臓の音が煩いぐらい音をたてた。
「さん…アンタが好きです」
ひゅっと息を呑む。総悟との間の視線が離せなかった私は言葉を失った。
固まっている私に容赦なく顔が近づいて。
「………ッ」
言われなくても分かってしまうその後の行動。
羞恥心からその場を逃げ出したい衝動に駆られるけど、手首ががっちり固定されて逃げる事も叶わず、私の心情も知らずに容赦なく接近する整った顔面を見ていられなくて、視界から逃げる様にギュッと目を閉じた。
「…ッ……?」
覚悟したのにその行為は一向に起きず、その代わりにカシャっと音を鳴らす無機質な電子音。
「プププ…すっげーアホズラ」
やられた…と思った。目を開けれそこにはやっぱり携帯画面を見ながら憎たらしい笑みを浮かべる総悟の姿で。
「ふ、ふ、ふ、ふざけんなァ!!今すぐ消せよ!!!」
慌てて携帯を引ったくろうと手を伸ばせば寸前で躱される。何度も何度も腕を伸ばしても軽い身のこのなしでひらりと躱された。
「はぁはぁ…乙女心を踏みにじりやがってぇぇ!!まじ許さねーからな!!」
「ほぉーれ、取れるもんなら取ってみやがれー」
「ッッ!くそッ!このドS野郎ォ!!」
立ち上がったっても身長差で全く手の届かない。
そりゃそうだ。私と総悟じゃ10センチ以上も差がある。
手を上にあげられたら持っている携帯に触ることすら私にはできない。
最悪…本当に最悪だ。あんな写真ばらまかれたら恥ずかしくて真選組に居られなくなる。
「このっ!いい加減…よこせぇ!!!!」
「っ!?」
私は渾身の力を込めて総悟に飛び付いた。
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