第2章 思春期は理解不能
飛びついた衝撃で足元の畳が滑る。ぐらりと傾く体はそのまま畳床に倒れ込んだ。
「いっ…てェ…」
私の腰に腕を回す総悟を押し倒す体勢で倒れ込んだ私達。真下から総悟の呻き声が聞こえる。
「オィ、何騒いでやがる。ちゃんと始末書…」
見計った様にスライドした障子から土方さんが部屋に入ってきたけど
「お、お、お前ら…ちょ、なっなにしてんのぉ!?」
そんな事どうでもいい。総悟が土方さんに気を取られている隙に、私は押し倒している総悟の手先の携帯に手を伸ばした。
「と…取ったどぉぉぉお!!!」
天高々に携帯電話を掲げて叫んだ。急いで携帯を操作して画像フォルダを開きキス顔の写真を探すけど…な…い?
「あ、あれ…なぜ?確かに写真がッ 」
「まったく土方さんって本当KYですねィ?少しは空気読めよ」
「えっ、お、お前らってそーゆう関係だったの?」
「見ればわかるで…いでっ」
「そんな事どーでもいいんだよ!!写真どーした写真!!!」
立ち上がった私は総悟の横っ腹を思いっきり殴った。腹を押さえる総悟に携帯を突き出して睨みを効かす。
「げほっ…そ、そもそも保存してないんで」
「は?」
「だから、最初っから保存しないで消しやした」
じゃあ最初っから保存もされてない物のために私は総悟を押し倒してまで携帯を奪おうとしたの?何の意味もない行動の為に土方さんに勘違いされたと?
「まったく今夜のさんは大胆だねィ。急に押し倒してき…──いでェ」
「お前はいちいち誤解を招く発言をするんじゃないよ!!土方さん、違いますからね!?私と総悟はそんな関係なんて微塵もありませんから。むしろそんな不祥事起きませんから!!」
「いでで…いや、さっきは満更でもなくキスがお」
キス顔と言いかけた総悟の顔面に今度は右ストレートをお見舞いしてやった。
「いっ…てーなァ!さっきからボカすか殴りやがってこのメスゴリラァ!!」
「うっせーだよ!この無神経ドS野郎!!その無駄にイケメンな顔面、一生使いもんに出来なくしてやろうかあぁん!?」
「上等だァ!やれるもんならやってみやがれィ糞女!!」
「おい…頼むからお前ら静かにして」
結局私と総悟の喧嘩は、土方さんがブチギレるまで続いた。
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