第2章 思春期は理解不能
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うん、我ながら良いことを言ったと思う。
食材一つ一つ丹精込めて作られてるわけだし、世の中食べたくても食べられない子とか、居るじゃん?
向かいから「年寄りか、お前は」とツッコむ上司はこの際無視しておこう。
「チッ。………うっせーのが来たんで食欲失せやした」
うんうん、うっせーね。
うっせー、うっせー、うっせ……ん?
『は、はぁぁぁぁ!?』
この際舌打ちは百歩譲って許すとして、うっせーってなに?そのまま総悟はそそくさと食器を下げて食堂から出て行った。
流石にあの言い方は作ってくれた人の前に私に失礼すぎないか?
大人のさんでも…流石に怒っちゃうよ?
『ちょっと母ちゃん!!』
「誰が母ちゃんだ」
『この際母ちゃんかはさほど重要じゃ無いです。どんな育て方されたらあんなクソ生意気になるの!?ねぇバカなの?バカなのかぁ!?』
「俺に振るなって…」
反抗期の子供が居たら、あんな感じなんだろうか…。全世界の母親は本当に偉大だと思う。もうね、頭上がらないわ。
反抗期があったか覚えてないけど、私に母親が居るなら是非ともスライディング土下座して謝りたい。
ムスッたれる私を見て、彼なりのフォローのつもりだったのか「どうせ本心じゃねェだろ」などとふざけた事を言うから尚耳を疑う。
『正気ですか?アレが本心じゃなかったらなんだって言うんですか』
「ツンデレ」
『アンタ馬鹿ですか。総悟がツン"デレ"?デレの要素ある?ツンデレはなぁ、もっと可愛いんだよ!ツンツンした後にちゃんと甘えてくるんだよ!!アレはどちらかと言うとツンドラです』
この際、土方さんが"ツンデレ"を知っている事のツッコミはひとまず置いておこう。ツンデレじゃなくてツンツンドライだろ。絶対的拒絶。
絶対零度の如く私を見る目が冷たかったのをこの人は見ていなかったのか。その眼球は飾りか。
「今頃言い過ぎたって反省してるかもな〜」
『いやいや…無い無い。総悟にかぎってそれは絶対にないです。あったらもうすぐ来る春が冬に逆戻りして吹雪がおきますよ。天変地異が江戸を襲います』
総悟と反省の二文字は見事にミスマッチで、そんな可愛い所があるな是非とも拝んでみたい。私の上司は眼球どころか脳みそまで飾りだった。