第2章 思春期は理解不能
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池田屋事件から一夜明け、新撰組の朝。私は眠たい目を擦りな食堂に入ると、既に起きている隊士たちが朝食を食べていた。女中のおばちゃんから朝食を受けとり、空席の席を探すと亜麻色の髪が目につく。
(昨日の事もあるから…なんか気まずいなぁ)
朝食の時は大体総悟の向かいに座る私。当然今日も彼の向かいの席は空席で、私の為に誰も座らない。
若干の気まずさはあるものの、別に怒ってるわけではないし。それならここで私が避けたらそれこそ喧嘩になってしまうから"いつも通り"を振る舞って私は空席の席に朝食を置いた。
『総悟おっはよー』
いつもの様に陽気な声で挨拶をしながら椅子に座る。ご飯を食べる手を一瞬止めた総悟はすぐに黙って食事を再開させた。
いつもなら軽くても朝の挨拶が返ってくるのに今日は何も言われなかった。黙々と食事を口に運び続けるだけで、私の呼びかけには反応すら示さない──…明らかな"無視"。
まぁその反応も予想はしてなかったわけじゃ無いし、「うん、進行形で絶賛反抗期ね」なんて思いながら朝食に箸をつけ口に運んだ。
『ん〜、この鮭、脂が乗ってて絶品〜っ』
「…お前は朝から元気だな」
鮭に舌鼓売っていると斜め向い座るマヨネーズを絞るマヨネさんが話しかけてきた。
『あ、マヨネさん居たんですか?』
「お前が来る前から居ただろーが。てか誰がマヨネだ。訳すな。せめてマヨネーズにしろ、いや土方と呼べ」
「え、なに?土方マヨネがいいって?それともマヨネーズ土方?もうめんどくさいんでマヨ方さんでいいですかね』
永遠と三本目のマヨネーズを絞るマヨ方さんを挨拶がてら煽る。三本ものマヨネーズがぶちまけられた鮭はもはや鮭ではなくマヨネーズになっていた。その胸焼けしそうな光景はいい加減やめていただきたいと思う。毎朝、毎晩、マヨネーズマヨネーズマヨネーズと…これは一種のマヨハラだ。
「…てめぇーな」と土方さんが怖い目で言いかけた時、ガタンと音を立てて総悟が椅子から立ち上がった。その手には食べかけの朝食。私は総悟を指差して言った。
『こら!成長期の若者がご飯を残しちゃいかんよ』