第2章 俺、参上!
「この女……っ!!」
忽ち頭に血が登ったチンピラどもは、自暴自棄にに殴り掛かる。
「危ない!!」
良太郎が叫んでも、は微動だにせず、繰り出された拳をじっと見つめている。自分との距離が限りなく零に近くなると、颯爽とその拳を掌で受け止める。そして二の腕に空いている手を持っていくと、背後に落とすように持ち上げて叩きつけた。所謂背負い投げ。
「クソっ!!」
別のもう一人、今度はニット帽とグラサンを身につけたチンピラがに殴り掛かると、はひらりと躱して彼の背中に蹴りを入れた。倒れたことを確認すると、最後の一人を睨みつける。どうしてやろうかと考えていると、突如として背後からマフラーやら白い上着やらが目の前のチンピラにぶつかった。そしての足元にはミルクディッパーでも見た白い砂。
不審に思ったが素早く振り返ってみると、そこには髪を逆立てた赤い瞳の良太郎が、どこか恍惚な笑みを浮かべて立っていた。
「──俺、参上。おいお前ら……面白そうなことしてんじゃねぇか。俺も混ぜてくれよ」
発せられた言葉も、普段良太郎が喋っているようなこととは全然違う。彼は黒い棒を手に取ってチンピラに突っ込んでいき、棒を振り回して暴れまくっている。
「行くぜ行くぜ行くぜ!!」
(──違う、良太郎はこんな猪突猛進な性格じゃない。こいつは良太郎じゃない、こいつは得体の知れない別の何か……!)
キッと鋭く良太郎(?)を睨むと、取り出したナイフを手に力強く握る。しばらくするとまた様子がおかしくなり、良太郎は手に持っていた棒を落として髪も目の色も元通りに戻っていた。
「良太郎……!!」
咄嗟の判断では良太郎の手を掴んで走り、手に持っていたナイフもいつの間にかしまわれていた。