第2章 俺、参上!
「はぁ!?そもそも貴方が瓶落としたせいでこうなったんですけど!!」
「ぐっ、それは……すまなかった……」
だが、それとこれとは話が違うとが怪我しないよう配慮して止める従業員と、良太郎が心配でそれどころではない。しばらくそれを繰り返していくうちに、ついにの堪忍袋の緒が切れた。
「いいからどいて下さい……そんな事どうでもいいですし良太郎が心配です。どかないなら刺します」
そう言うなり何処から出したのかの手には一本のナイフが握られていた。言葉だけならまだしも、道具を持っているとしたら本当にやりかねないと察した従業員は唖然として腰を抜かし、その場に尻もちをつく。
従業員が邪魔しなくなったことを確認してから、はすぐに良太郎が向かった方向へ全速力で走っていった。
が良太郎を見つけた時には、良太郎は地面に突っ伏していた。起き上がった彼の顔に傷や痣があったことから、おそらく殴られたのだと察する。そうなると必然的に殺意を覚えたは、良太郎の服についている砂を落としながら殴ったのは誰かと聞く。
「……ねぇ良太郎、その痣つけたの誰?」
「え?えっと……って、教えたらその人に酷いことするでしょ?ダメだよ」
「なんで?良太郎は傷つけられたのにそいつは無傷なんて不公平すぎる」
「僕なら大丈夫だから、何もしなくていいよ。それには女の子だからそんなことしちゃ余計にダメ」
「……良太郎が、そう言うなら…」
本当なら、今すぐにでも良太郎を傷つけた奴を半殺しにでもしてやりたかったのだが、そんな事をしては良太郎が悲しむだけと言い聞かせれば、先程まで抱いていた殺意を抑えることが出来た。
砂を叩き終わった良太郎は、近くに何かが落ちていることに気づく。そこに目をやれば、も良太郎の目線を追って落し物に目を向ける。
「パスケース……?それ、良太郎の?あれ、でもこんなもの持ってたっけ」
「ううん、僕のじゃない。誰か落としたのかな……」
「なら交番にでも届けてあげよっか」
「うん、そうだね」
微笑みまじりで言葉を交わす二人の空気は忽ち和やかなものへと変わり、は良太郎に頼まれて自転車を修理店に持っていく。