第1章 ラキオ【数値化できないもの】
いつまでも答えを焦らすが、ようやく口を開きかけた時、Leviの声が響いた。
…タイミングの悪いことだ。
いや、逆に良かったかもしれない。
急かしてくれた、と考えよう。
『様、ラキオ様。次の空間転移までにあまり時間がございません…名残惜しいのは承知しますが…』
「わかってるよ。すまないが、2人きりにしてくれないか?Levi……」
仕方ない。このままだと僕も妙に気になるし、それだけ聞いたらさっさと眠らせよう。
「あのね…ラキオ」
「…なンだい」
「好きだよ、ラキオ」
そう言うと、
は突然僕に抱きついた。有無を言わさず、柔らかい唇が僕のそれに重なる。パルスの体温、香り、感触、感情も全て一瞬にして僕に伝わった。僕の男としての体とは違う、女らしい柔らかくて華奢な体。
「ラキオは汎だから恋はしないっていうのはわかってた…嫌われるのが怖くて、ずっと言えなかった。でも、やっぱり私はラキオのこと、大好きなの…」
数秒の硬直の後、は僕から身を離す。
生まれて初めての感覚に、僕は茫然としていた。
「…ありがとう。こうして想いを伝えられただけでも、私は嬉しい」
の頬は赤く染まり、目を潤ませていた。コールドスリープが怖がっている…だなンてことありえない。僕が見ても、演技にも思えない。命乞いをすることも無い…。
馬鹿な。僕との別れがそンなに惜しいのかい。やれやれだ。自分の身を自分で守れなかった、それだけなのに。
彼女はそう言いながら…僕の返事をきかずにポッドの中へ横になる。
僕は蓋を占める前に、彼女に顔をズイと近づけた。感情…?理性が効かない。反射的に体が動いている。
「待て。」
驚いたの顔がある。
は目をまんまるにして驚いていたが、僕の視線を捕らえて離さなかった。
ここまで誰かと至近距離になったことはこの僕ですら初めてだった。いや、こンなの無意味だと思っていたから。色恋だとか欲情だとか穢らわしい。僕がに抱いている感情は、そんなモノではない。無駄であることは否定しないがそれでも…少なくとも汚れたものじゃない。不快なンかじゃない。