第1章 ラキオ【数値化できないもの】
「…気が散るンだけど」
僕が冷たくあしらうと、彼女は決まってこう言うのだ。
「それじゃあ、またお手伝いしてもいい?」
「『お手伝い』ねェ……君にお手伝い役が務まるか分からないけど、雑用程度なら任せられる。僕が支持した道具を持ってきたり元の場所に直したりするだけの簡単な雑用だ。ほら、くれぐれも精密機械は丁重に戻しておいてくれよ」
『気が散る』というのは半分本当だが半分嘘だった。まあ、は雑用係としてはそれなりの能力を発揮してくれたから?仕方なく置いておくことにした。ロジックはさほど高くないはずだが…彼女は妙に容量が良く、手際だけは良かった。まるで『何度も経験しているから慣れっこだ』と思ってしまうほどに。
「わかった!」
言われたことを黙って実行するだけでかまわないのに、律儀に返事をする。他にも「ラキオってどうしてご飯食べないの?」とか「ラキオって、好きなものないの?」とかとにかくくだらない質問が多くて…つくづく『無駄』な時間だ。僕としては『無駄なもの』省きたくなるしょうぶんだが、そしたらの唯一と言ってもいい魅力がなくなる気がする。『魅力』?僕はコイツに何を見いだしているんだ。変なの。
「どうして、僕なンかに話しかけるんだい。僕と話して、君は何を得られるンだい。」
「私はラキオのそばにいられるだけで嬉しくて……それに…」
は後半言葉を濁した。
明らかに動揺していたのが分かる。僕との友情?ハッ。
こんな状況下で友情なんぞ信じられるわけが無い。がもしまがい物だった場合、僕が真っ先に消されるじゃないか。
「それに…?………あぁ、そうか。君は僕を油断させるつもりだね。僕と手を結んで自分にとっての邪魔者を消そうとしたかったンだろう?残念ながらの魂胆は見え見えだよ。そう簡単に僕からの信頼を買えると思ったら大間違いさ。僕も安く見られたものだね。」
「ちがうっ!!…そんなんじゃなくて…」
「あのさ、言いたいことがあるならはっきり言ってくンない?」