第1章 ラキオ【数値化できないもの】
「僕を混乱させるだけさせておネンネしようなンて、虫が良過ぎないかい…コクハクをしたのに返事も聞かず去ろうだなんて君は本当に臆病者だね…この僕が答えてやるんだ。わざわざ!君にね!時間があれば、もっともっと感謝して欲しいくらいだ」
「っ……」
「君はこれが欲しいかったンだろう?」
僕は、の頬に触れ
の唇にキスをした。
僕にとって、初めてのキスだ。
…さっきが僕にしてくれたものを、見様見真似で。
彼女は驚きながらも、拒むことはせずただただ受け入れていた。「ん…ん…」と口の隙間から小さな甘い吐息を漏らしながら。
が熱くなっているのが分かる。
その熱はやがて僕にも伝わった。
「っ…はぁ」
「これで、分かっただろう?まさか分からないなんて言わないよね?僕にこンなことをさせるなンて……本当に君ってやつは…」
気持ち悪いやつだ…と言いかけて、やめた。僕はコイツにすっかり毒されているのに気づいたから。はぁ、本当に屈辱だよ。
「ありがとう…さっきまで少し怖かったけど…今は大丈夫…」
「フン………柄にもないとこ見せてしまったね。君は満足だろう。さっさと眠りなよ」
僕は、幸せそうに目を閉じるを見届けた。
この上なく、静かで心地よい時間と感じた。人の体温など煩わしいだけだと思っていたけれど、コイツだけは特別なのかもしれない。
だけど、この僕が心地よいと思えた、その温かさもなくなってしまう。
…僕には他にやることがあるじゃないか。
それなのに、何故こんなにも空虚なんだ。エンジニアとして、他のヤツらを守って、グノーシアを突き止めて……やらなきゃいけないことがあるのに。『他のヤツら』?それは、と同じくらい僕にとって重要なものなのか?そいつらを救ったところで、僕にとってのメリットは。何が得られる。どうせ僕は嫌われているンだ。そして僕もそんな周りを嫌っている。仲間意識だなんて、人間であるという最低保証であって…それ以上の愛なんて僕にはない。捧げる相手はいたかもしれないが、そいつはもう凍ってしまうのだから。周りから向けられてきた嫉妬の目。自己保身のために向けてくる厚化粧のような笑顔。僕が気づいてないとでも?
僕は、そのまま空間転移の時間まで
目を閉じるの隣に寄り添った。
終