第1章 ラキオ【数値化できないもの】
コールドスリープ室へ連れていく道中、僕達は会話を交わした。
「フン……馬鹿な奴らだ。周りの意見に流されるなンてね。確かには胡散臭いというのも分かるけどね。媚びうるような甘ったるい態度を振りまくやつだし。だが個人的に納得いかないのは、アイツらが僕の意見を聞かなかったことだ…全く、人間というのもなかなか屈辱だね。アイツらと同類なンだから」
「由里子のカリスマ性は恐ろしいね……ラキオはずっと私の潔白を主張してくれてたのに」
「ハッ、だろうがじゃなかろうが一緒だったさ。僕の言うことに素直に従わないような、ああいう連中を見てると虫唾が走るからね。グノーシア共の思うつぼだ」
「私も、もっと強く主張したり、ラキオのこと庇ったりしてたら皆信じてくれたかもしれない…ごめんね」
「…フン、に謝られる筋合いなどないさ。ただの乗員であろう君に何が出来る?何も出来ないだろう」
それに、投票はに集中したせいでそれまで疑惑を向けられていた僕は選ばれずに済んだところもある。まあ、そこは感謝するけど…僕の意見が信用されていないというのは変わらない事実だろうが。認識したくない事実だ。
「でも、最後まで庇ってくれてありがとう。見送ってくれたのがラキオで嬉しいよ」
「はぁ…気持ち悪いな。この僕が聞いてあげるんだから、もう少しマシな遺言を頼むよ」
「私を強く弁護したせいでラキオまで怪しまれないかが不安…」
「君と一緒にしないでくれる?僕が君の立場ならもっと上手く立ち回っていたさ。それに、エンジニアという立場である以上そう簡単には冷凍されない。明日の夜、確定しているドクターの答えで僕の白が確定するのは明らかなンだし」
「そっか…それなら良かった。私の犠牲でラキオが信じて貰えるなら」
確かに会議では有利になる…意味のある犠牲、という意味で彼女は役に立てることができるのだ。だがしかし…
「はぁ…君は僕の雑用係とはいえ、いなくなると不便になるよ。全く。はいてくれるだけでいいのに。というか、それ以上のことなンて僕はこれっぽっちも望んでないけどね。余計な手出しされたらたまったもんじゃない」
「『いてくれるだけでいい』…か」
は、これから冷凍されるというのに
嬉しそうに目を細めた。意味がわからない。