第1章 ラキオ【数値化できないもの】
のコールドスリープが決定した。
…してやられた。
僕はエンジニアで、彼女を調べた結果はっきり人間だということが分かった。それなのに。周りの凡愚どもは僕の言ったことの内容すら理解できないようだった。…否、僕自身を信用していないような者が多く見られた。
『カリスマ性』などという数値化できないものを武器にすることは嫌いだし、ましてやそれに振り回されることは僕にとって屈辱でしかない。最も無意味で非現実的で根拠のないもの……だのに、それを前にして僕は完全に敗北した。それが事実だった。確実に偽物であろうエンジニアの由里子に、は黒だと報告された。僕がいくら庇おうとも、皆、アイツの意見に流されるがまま投票した。と協力関係にあったらしい沙明と、前からと仲が良かったセツだけは由里子に票を入れていたが。
今に後悔するがいいさ。君たちが大事にしていた無罪のは、君たちの手によって冷凍睡眠することになったンだ。
僕は庇っていたというのに。
僕が本物だというのに。
は前日…いや、それよりも前から
僕に絡ンでくることが多かった。
頭の悪い連中なンて相手にするだけ時間の無駄だから僕はよっぽど暇でもない限り、誰かと会話を交わしたりすることはなかった。そもそも、おしゃべり自体が好きではないというのもある。
あまり人を寄せ付けンとしていたからか、周りは僕を『意地悪な人』だとか『頭いいけど関わりたくないやつ』だとか好き勝手レッテルを貼られてるようだった。まあ、バカ共が僕のことをネタに、好き勝手言ってようが気にしないけれどね。所詮悪口や人格否定なんて、その人が抱いた感情から生まれたものでしかなくて、事実がそうとは限らない。根拠もない悪口に耳を傾けて気を病むほど、僕は愚かじゃない。そんなレムナンみたいなこと、僕はしたくない。
僕はコールドスリープが決定したを見送ることにした。なンてことはない。ただの気まぐれだ。
白なのにも関わらず、多数決というシステムに敗北した、哀れな犠牲者。僕が見届けてあげなきゃ可哀想だろう?報われないだろう?それに、彼女は慰めが欲しそうな顔をしていた。