第2章 沙明【幸せな夢を求めて】
「…この期に及んで俺の心配かよ。俺はお前を裏切ったんだぞ」
「そんなの関係ないもん…私は沙明が好きなの…!」
…泣きてェのはこっちだってのに……お前がそんなに泣いてたら、男として慰めずにいられねェだろうが
俺はせめての気持ちに応えたくて、強く強く抱きしめ返した。
の顔は涙でグシャグシャになっていた。だけど、俺にはどうしようもできなくて、胸が締め付けられるだけだった。
「沙明…沙明っ……」
抱きしめている間も、はずっと俺の名前を呼んでいた。
不思議なことに、そうしてくれている間は、俺でいられてる気がした。
「があまりにも名前連呼すっから、いつもの沙明に戻りかけちまったじゃん………ありがとよ」
お互い抱きしめる力を緩めることなく、
俺はの頭を優しく撫でた。
は俺の胸の中でひとしきり泣いた。
コイツはいつも落ち着いてて、
いつも可愛らしい一面を見せていたが
…ここまで感情を爆発させて
わんわん泣くのを見るのは初めてだった。
こんな状況で言うのもなんだが、
の知らない一面を見られた。
「私ね……考えたことがあるの」
抱きしめあったまま、が呟いた。
涙を枯らしたは瞼を赤く腫らしていた。考えを提案するということもあってか冷静な口調だった。
「あのね、嫌なら嫌って言って欲しいんだけどさ…私と一緒に寝ない?」
…は?
「…ホワァッツ?え、おま……最期のご褒美?…」
「あっ、えっとそういう意味じゃなくて!…い、いやでも本当はそういうことも、したかった…けど難しいから……」
そこは否定しねェのかよ。
可愛いやつだな
「あのね。私と一緒にコールドスリープするのは…どうかなって」