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御伽噺の真似事〜冷眠姫〜

第2章 沙明【幸せな夢を求めて】


「ああ、グノーシアだぜ俺ァ。気付かなかったか?ハッ、やるじゃん俺」

俺はの方を恐る恐る見た。
どういう感情なのかイマイチわかんねェ。
ただ、怒ってる訳ではなさそうだ。
別段驚いているようにも見えないし…
お前は何を思ってンだ?
お前は、俺に対して思うことはないのか。

「……なあ。このままじゃ。俺はお前を消しちまうよ。衝動がさ。自分でも抑えれねェんだ」

昨日まで、俺は『この世から消えること』が一番怖いと思ってた。
だけど…それは大きな間違いだった。
『大事なものが消えて、自分だけが取り残されること』
自分を失うのは勿論怖かった。だが、それ以上に、他の誰かを失うことが怖くて仕方がない。
忘れていた。思い出したくもない、あの悪夢のような思い出が。自分の中でも蓋をして思い出さないようにしていたのかもしれない。

「俺は……どうしたらいい?
教えてくれよ、なァ…」

声が震えていたのは、俺の方だった。
グノーシアじゃない、『俺』が絞り出したヘルプの声だった…のことは消したくない、手荒な真似もしたくない、1人になりたくない。アイツらみたいなこと……死んでもやりたくねェよ……奥歯がガチガチとなっているのが分かる。止められなかった。

…俺、このまま生きるのかよ
目の前の、自分の好きな女消して……
グノーシアになって得られたモンなんて、何一つねェじゃねえか…



「沙明」

気がつくと、俺は頭を抱えていた。
の声で、俺が戻ってくるのを感じた。先程まで失いかけてた冷静さが、ほんの少し戻ってきた。


「私ね、私はね。沙明なら怖くない…でも」

は優しく、今までで1番優しく、悲しげな表情で笑っていた。一種の諦めも感じられた。

「沙明がひとりになるのは…沙明が辛い想いするのは、耐えられないよ…!」

そう言うと、は俺に抱きついてきた。

「やだぁ…やだよォ!消えたくない、沙明と一緒がいい…!1人にしたくない…うぅ……」


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