第4章 戦場に帰る。
は結界を張った室内から、窓の外を睨んでいた。
あちらこちらから響き渡る轟音と悲鳴。
大規模な戦闘が続いている。
鬼とやらを倒す術を持たない自分は、煉獄のいう通りにこの部屋に篭って身を守っているべきである。
嫌に冷えきった思考はそう答えを出している。
しかし、
しかしだ。
今まで国を、人を護る為にこそ力を使っていた自分の心は、このままで良いのかと思考を揺さぶってくる。
出来ることはないのか?
助けられる人はいないのか?
鬼を倒す方法は無いのか?
このままで、守られたままで、騎士団の皆に顔向けが出来るのか?
窓を勢い良く開く。
窓枠は大きな音をたてたが、今、そんなことを咎める者は居ない。
嫌な気配が充満している。
町を覆っているのか、それは何処からでも漂ってくるようで、しかし、鋭く尖るような一角を感じとることが出来た。
其方へと顔を向けると、黒い隊服の人間が飛ばされてきた。
窓の真下の路面に叩き付けられたその人物を見ると、わずかに身動ぎをしている。
「生きてる!」
は窓枠に足をかけ、二階から飛び降りた。
両足に身体強化をかけ、難なく着地をする。
「―治癒」
応急処置程度に治癒の奇跡をかける。
全快させるほどの時間的余裕はない。
ずるり。
隊士が飛んできた方から、嫌な音、嫌な気配、嫌な臭いが這い寄ってきた。
――これが鬼。
耳まで裂けた口、
額から伸びる角、
頬を這うように描かれた紋様、
色のくすんだ肌、
その手が引き摺る人の脚。
ああ。
倒さなければ。
ぞわり。
全身の血液が沸き立つ。
皮膚にさざ波がたつ様な感覚。
「お前、旨そうだ。稀血とも違う、良い臭いだ。」
舌舐めずりをし、此方を見つめる鬼。
それを見据えたまま、右手の平を先程の隊士に向ける。
「聖壁、聖壁、聖壁。」
三枚の光の壁が隊士を包む。
三角柱の中の隊士はギリギリ保っていた意識で、この不思議な現象に驚くが、動くことは出来ず、ただじっとしていた。
「?何をしている!?」
鬼は此方を見て声を荒げる。
は右手を上空に翳す。
「閃球!」
上空に白い光の球が勢い良く上る。
高く上がると弾ける様に広がって消えた。
「では、お相手願います。」