第4章 戦場に帰る。
異形の鬼に対峙するの顔には恐れはなかった。
じっと相手を見据え、右手を体の左前へと掲げる。
「石弾!」
手を左から右へと振り切ると、地面から拳大の石が幾つも浮き上がり、礫となって鬼へと襲い掛かる。
「糞っ!何をしやがるっ!!!」
石を全身に打ち付けられた鬼が激昂する。
鬼は地面を踏み切り、此方へ飛びかかってきた。
右手を体の右下から左上へと振り上げながら、は声をあげる。
「風刃!」
圧縮された風が刃となり鬼へと飛んでいく。
鬼は身を捩り、大きな損傷を避けながらも此方へ迫る。
「聖壁!」
鬼はその体を光る壁に弾かれる。
「血鬼術か!?」
苛立ちを孕んだ声が響く。
「いえ、違いますよ。」
「…一緒にしないで。」
冷たい声が通っていった。
の顔からは怒気と嫌悪感が滲み出ていた。
ぞくり。
鬼は背中を走る悪寒に焦りを覚える。
この小娘は異質だ。
本能が警告をする。
じり。
目の前の娘は此方へとにじり寄ってくる。
その動きに警戒をする。
はまた、右手を上空に翳す。
鬼は全身に嫌な汗をかく。
「雷牙!」
右手を振り下ろすと同時に鬼へと雷撃が降り注いだ。
「あ゛あ゛あ゛あああぁぁぁあ!!」
鬼の叫びが木霊する。
雷光が掻き消えると、焦げた地面に正面から鬼は倒れ込んだ。
びくびくと痙攣をする鬼にその手のひらを向ける。
鬼は再生能力が高い。
以前、蝶屋敷で聞いた鬼の特性だ。
このままではすぐに回復してしまうだろう。
先程、光の球で危機を伝えた。
煉獄か宇髄が気付いてくれていれば、直に駆け付けてくれるはずだ。
それまで時間を稼ぐ必要がある。
「氷槍。」
倒れた鬼に、無数の氷の槍が降り注ぐ。
声にならない叫び声をあげる鬼を地面へと縫い付けた。
これで暫くは持つだろう。
ふぅ、と、は息をつく。
ザン。
と、音がすると同時に鬼の首が体から切り離された。
そこには大きな刃を掲げる宇髄が立っていた。
息が上がっているところを見るに、急いで駆け付けてくれた様子だ。
「宇髄さん、ありがとうございます。」
礼を言うの顔は、これまで見慣れていた穏やかな笑顔に戻っていた。