第3章 音柱邸
その日の夕餉は猪と山菜の鍋だった。
生姜と味噌をふんだんに使い、くさみもなく美味しく出来た。
ご飯がどんどん収納されていく煉獄の腹はどうなっているのだろう。
はいつも不思議に思うが、美味しそうに食べる姿を見るとどうでも良くなってしまう。
宇髄邸に世話になる約束は明後日の朝までだ。
明日は食事の支度以外はゆっくりと過ごす事になった。
この料理指南が終われば、宇髄の嫁達は潜入捜査へと向かうと言っていた。
鬼殺隊の任務だ。
危険が伴うかもしれない。
心配になるが、それを口にするのは彼女達への侮辱になるのではないか?
その実力を評価され、任務を請け負い、覚悟を持って向かい合う人々だ。
信じて待つ他は無い。
「お勤めが終わったら、またお会いしたいです。」
台所で食器の片付けをしながら、3人の嫁に話し掛ける。
「はい!是非また一緒にご飯つくりましょうね!」
須磨が笑顔で答えてくれた。
「次は友人として遊びに来て欲しい。」
まきをがからりと笑う。
その様子を微笑ましそうに見守る雛鶴。
この暖かい人達が大好きになってしまった。
「これからもよろしくお願いします!」
満面の笑みの。
こんな日が、いつまでも続いて欲しいと心から願う。
翌日も楽しく過ごす。
台所の事も大体は把握したは、その日は中心となり料理に勤しむ。
元々生真面目な性格で、謙虚な姿勢で学び、物覚えも良い。
もう、基礎的な事は心配ないだろう。
「また、わからない事があったり、料理の種類を増やしたかったりしたらいらっしゃいね。」
雛鶴がにこやかに言う。
「はい!何から何までありがとうございました!」
夕餉の片付けを終え、明日はいよいよ炎柱の屋敷へと帰る日だ。
寂しさを感じていると、須磨に風呂に誘われた。
宇髄邸の広い風呂に女4人で乗り込み、ワイワイ言いながら過ごした。
同性の友人とこうしてはしゃいだのは、いつの頃だったか。
まだ10歳になる前だった気がする。
懐かしくも、どこか新鮮な戯れが楽しくて、のぼせかけてしまった。
また、こうして会いたい。
その想いは心に優しい暖かさを与えてくれる。
この、自分の知らない世界で、これからも生きていく。
この暖かさは、それを支えてくれるだろう。