第3章 音柱邸
さらさらと、柔らかい風が頬を撫でる。
昼下がりの川辺では時間がゆったりと過ぎていった。
「さて、獲物を処理しちゃいますね。」
は宇髄が屋敷から取ってきた大きめの包丁を手に持ち、猪の方へと歩き出した。
慣れた手付きで腹を割き、腸を取り除く。
丁寧に皮を剥いでいると、煉獄が手元を覗きこみ、感心した様子で話しかけてきた。
「随分、手慣れているな!
何かコツの様なものはあるのか?」
「そうですね、まずは内臓は傷付けない様にする事ですかね。特に膀胱を破いてしまうと広範囲の肉を汚してしまって捨てる事になるんです。」
手は止めずには答える。
「後は、表皮や体毛を肉に触れさせない事でしょうか…。雑菌や寄生虫が付着するのを防ぎます。」
大変な作業であろうに、手際よくこなす。
「派手に見事な手捌きだな。良くやってたのか?」
「はい。遠征の時なんかは良く魔物を狩って食料にしていました。結構色々な種類を捌けますよ!」
何だか懐かしく感じます。と、呟いた。
「さすがに、ドラゴンを捌くのは一人じゃ無理でしたけど。」
クスクスと笑いながら話を続ける。
「巨大な魚型モンスターとか、大量発生した槍角うさぎとか、人が乗れる大きさの砂蜥蜴とか、ほんと色々いましたね。」
皮を剥がれた猪は、今度は部位ごとに切り分けられていく。
「他には、どんなのがいたんですか!?」
須磨は瞳をキラキラさせながら尋ねる。
「そうですねー、自動車位の大きさの鳥を捌くのは大変でしたよ。主に羽を毟るのが。羽が一枚一枚大きいですし、中々抜け抜けないんです。」
身振り手振りで羽の大きさを表現すると、
「それは重労働だな!」
と、煉獄が笑う。
「大体、見かねた騎士の方が代わってくれてました。」
苦笑しながら続ける。
「あと、やっぱり自動車位の大きさの蛙を捌いたときなんですが、胃の中から消化途中の人間が出てきた事がありまして…。」
「ひぃい!」
須磨の顔色が真っ青になった。
「あれ以来、どんなに小さくても蛙が怖くて仕方がないんです。」
遠い目をしながらぼやくに、何ともいえない視線が集まる。
「こっちにはいないといいんですが、巨大がまがえる…。」
その手元には、きれいに切り分けられた猪の肉が並べられていた。