第3章 音柱邸
「…雇用主…ですかね。」
眉間に浅いしわを刻んで、難しい顔で答える。
そんなに真顔になる3人。
しん、と台所が静まる。
「うー、そうじゃなくて、ちゃんはどんな気持ちで炎柱様を見ているんですか?」
眉をハの字にして須磨が尋ねる。
「感謝と尊敬…です。」
目元を細めて答えた。
優しげな表情を浮かべたは、口許にほんのりと笑みをこぼす。
「身寄りの無い私を雇い入れてくださった上、いつも色々と助けて頂いています。お気遣いがとても暖かい、尊敬出来るお人柄です。」
コトコトコトと、鍋が音をたてた。
煮物の下茹ではそろそろ良い具合だろう。
「味付けに使う調味料はこれとこれとそれ、それぞれ味見をしてみて。」
雛鶴がを促す。
話題は有耶無耶に終わったが、まきをは思う。
あの表情は只の雇い主に向けるものではないだろ、と。
が鈍いのか、気持ちを分かって隠しているのか、話をはぐらかしたのかは分からないが、炎柱に惹かれている様にしか見えない。
まあ、当人がそれを良しとしているならば、わざわざ引っ掻き回すようなことを言う必要はない。
なるようにしかならない。
それでも、良い方向に進めばいいな、と密かに願う。
自分達に料理を習う、幼さは残るが凛とした顔立ちの少女の行く先が明るいものであって欲しい。
そんなことを考えていると米が炊けた様だ。
火から下ろし、蒸らすために邪魔にならない場所に釜を移動した。
その日の夕食は盛り上がった。
うまいうまいと大声で連呼する煉獄に、うるせぇ!と怒鳴り突っ込みを入れる宇髄。
それがつぼに嵌まり笑いが止まらないまきをを嗜める雛鶴。
味噌汁をひっくり返し慌てる須磨に布巾を手渡し心配をする。
賑やかな食事をそこにいる者全員が楽しんでいた。
明日は山菜を取りに行こうと約束をし、食器を片付ける。
洗い物をしながら、順番に風呂に向かう。
通された客間で寝間着に着替えたは、明日も晴れると良いなと思いながら床に着いた。
襖を挟んで隣室にいる煉獄から、おやすみと声がかかった。
起き上がり襖の前まで歩んで、おやすみなさいと返す。
今日はぐっすりと眠れそうだなとは布団にくるまり瞳を閉じた。