第3章 音柱邸
「雛鶴さん、まきをさん、須磨さん、よろしくお願いいたします。」
は畳の上で正座をし、三つ指を付いて頭を下げた。
煉獄に教えてもらった、この国の礼儀を実践する。
気さくに自己紹介をしてくれた3人にはとても好感が持てた。
是非仲良くして頂きたいと心から思っている。
「あ、頭をあげてくださいぃ!」
やや幼さの残る顔立ちの須磨が声をかける。
「ええ、どうか楽にしてくださいね。」
落ち着いた雰囲気の雛鶴が続く。
「折角の機会なんだ、仲良くやろう。」
キリッとした顔立ちのまきをがニカッと笑いかける。
「ありがとうございます!」
ほんのりと頬を赤くしたがはにかみながら答える。
女同士で少しはしゃぎながら、話を始めた。
お茶とお菓子を囲み、この練りきりの形が可愛い、団子が柔らかい、豆大福が絶品だと、嬉しそうに語り合う。
そんな、打ち解け始めた様子を見て、煉獄と宇髄は安心した様な、そしてどこか満足げな表情になる。
「俺ら、ちょっと出てくるわ。後の事は任せていいか?」
宇髄は3人の妻に問いかける。
「大丈夫ですよ。」
雛鶴が答えると、よろしくなと声を掛ける。
煉獄と連れ立って玄関へ向かう。
「すぐそこの川べりが結構居心地がいいんだ。」
と、煉獄に向けて語り掛ける。
「うむ!」
返事を返しながら草履を履く煉獄。
玄関を抜け、先導する宇髄に続き歩き出す。
足音をたてずに進む宇髄に、やはり忍なのだなと考えながらその背を見る。
サラサラとせせらぐ音が耳に入る。
屋敷からそう歩かずに、清流にたどり着いた。
腰掛けに丁度良い岩が幾つか転がる辺りで歩みを止めた。
「まあ、座れや。」
そのうちのひとつに腰掛けながら宇髄は煉獄に声をかける。
「ああ。そうさせてもらおう。」
近くの岩に腰を下ろす煉獄。
少しの静寂にそよ風が心地良い。
「柱は引退か?」
まるで、今日はいい天気だとでも話しかけるような口調で宇髄が問うた。
「やはり、気付いていたか。」
世間話をするように答える。
「呼吸が出来ていない。左目ももう見えていないんだろ。」
煉獄の方には目を向けることなく、斜めしたの水面を見つめる。
「ああ。肺が潰れた後遺症でもう全集中はできない。左目も形が残ってはいるが、もうほとんど機能していない。」