第3章 音柱邸
翌日、2人は音柱の屋敷へと向かっていた。
「音柱様は、どの様なお方なのですか?」
道すがらが煉獄に尋ねる。
「うむ。宇髄は元々は忍だ。」
「しのび?」
聞きなれない言葉には小首をかしげる。
「昔、武将等に仕えていた者達だな。
諜報や暗殺等を生業としていた。」
「アサシンみたいな者の様ですね。」
「あさしん?」
今度は煉獄が小首をかしげた。
「暗殺者です。隠密行動の専門家ですね。」
「ほう。そちらにも似たような者がいたのだな。」
顎に手を当て感心する煉獄。
「忍は今はもう居ないと思っていたのでな、宇髄に初めて会ったときには感動してしまった!」
嬉しそうに破顔する煉獄に、はつられて微笑み返す。
胸の辺りが暖かくなる様な感覚を覚えた。
「杏寿郎さんは、その方がお好きなのですね。」
ふふ、と笑みながら語りかける。
「うむ。鬼殺の手腕も見事だし、心根も良い。尊敬出来る人物だ。」
「…ただ」
「ただ?」
言葉を濁す煉獄の横顔を不思議そうに見る。
「奥方が3人とは、多すぎると思う!」
正面を向いたまま答えた。
「こちらでも、一妻一夫が主流なのですか?」
「ああ。そうだな。
一部の華族や商家等では妾を囲うこともあると聞くが。」
「私たちの国もそうですね。庶民は一妻一夫。上流階級や貴族では複数の妻を娶ったり、愛人を囲ったりしてますね。」
「似たような所も有るのだな。」
「そうですね。」
お互い、顔を見合わせて笑う。
住み込みで働き始めた時よりも、大分打ち解けていた。
「私は結婚するという道を絶ってしまったので、その様な話しには縁がなかったのですが、愛する方と一緒に添い遂げるというのは憧れますね。」
正面を向いたまま、少し寂しげに微笑む。
その横顔を不思議そうに見つめる煉獄。
「神殿に仕える女性は生涯を神に捧げる事で奇跡を得るのです。」
「寺に入る尼の様なものか。」
煉獄は納得するが、腑に落ちないような歯痒いような感覚が靄のようにまとわりつく。
「はこんなに愛らしいのに何だかもったいないな。」
無意識に発した言葉に思わず口元を手のひらでおさえた。
バッとこちらを振り向くは顔を真っ赤にしていた。