第1章 組織で生まれた子
しかし今回この子の命があるのはジンのお陰でもある。
普段なら妊婦だろうが見向きもなしに殺害するジンだが、今回ばかりはベルモットが説得した。
それを最終的に判断したのはジンだ。
NOCの父親と組織の母親、決して愛し合ってはならない2人が禁断の恋に落ちた。その結果、新たな命を授かった。2人は組織を抜けようとした。それが組織にばれ、父親はその場で殺された。母親も殺されそうになった時、お腹の子だけは助けて欲しいと頼んだ。ジンは反対していたがベルモットの説得によって母親は子供を産んだ後すぐに殺すという条件で出産を許した。
「本当に、彼女が望んだらね」
ベルモットには今はこれが精一杯だった。
ジンは好奇の目でを見た。
ジンにとっては改良し放題の単なる組織の道具でしかなかった。
この時、は。
それからは主にベルモットによって育てられた。ベルモットは実の母親のようにを愛した。なるべく組織に触れさせないように、黒に染まらないように、普通の女の子として生きれるように。
は驚くほど手がかからない子だった。子育ての経験がないベルモットでも、あまりに問題なく成長していくので逆に心配になったほどだ。読み書きも早く、喋り出すのも早かった。
組織がの能力に驚かされた最初の出来事は小学生2年生にしてハッキングが出来ていたことだ。組織が手こずっていた極秘情報のハッキングにいとも簡単に成功したのだ。ハッキングなど誰も教えていなかったと言うのに。
その時のジンの期待に満ちた目を、ベルモットは未だに覚えている。
その頃ぐらいだろうか、がジンとよく行動を共にし始めたのは。
そもそもの存在はこの時はまだごく一部の人間にしか知らされていなかった。
NOCの子であると知ればいじめを受ける可能性があったからだ。
今思えばジンがそれを許すはずもなかったのだが。
それからは美しく育った。口数は多い方ではないがそれがまた謎に包まれたようで組織だけでなく、学校の同級生からも注目された。
は小中高と普通の学校に通った。高校は県内一の進学校だった。それも首席だった。