第4章 見えない傷
男はフイ、と小さく首を振ると先程部屋に入ってきた部下の1人がテーブルにパソコンを置く。
そこに映し出されたのは今現在社長室にいるバーボンの姿。
は目を見開く。
まさか、自分にバーボンが殺されるところを見せようというのか。
「安心しろ、社長室の近くには俺の部下は誰も置いてない」
男の楽しそうで、歪んだ視線がの瞳を見つめる。
「ここには色々と知られては困る情報がたくさんある。
殺人現場になるなら、いっそのこと全て消えた方がましだ」
はその言葉の意味に、画面越しにパソコンをハッキングしているバーボンを見る。
逃げて…
そう想いを込めて
「このEnterキーでドカンさ。大切な仲間が吹き飛ぶところを見せてやろうか」
男の笑みが気持ち悪い。
こんな男に、バーボンの命を奪われてはいけない。
「それとも、選択肢を与えてやろうか?」
「内容は」
「ははっ、そんな睨むなよ。俺はお前の容姿を気に入ってるんだ。」
銃口が額から顔を伝ってドレスの空いた胸元で止まる。
「お前のようないい女に会うのは久しぶりだ。コイツの命と引き換えに、お前の身体を俺に寄越せ」
グイッと銃口の先が胸にくい込む。
「…信じていいの」
「ああ。ただしお前が抵抗した時点でこの男は消えてもらう」
はギュッと拳を握った。
気持ち悪くて堪らない。男の舐め回すような視線が、周りの部下のソワソワした雰囲気が。
バーボンに対する、扱いが。
全て。
…でも
「分かったわ」
の返事に男はニヤリと笑った。
その笑顔に、吐き気がした。
腕を強引に引かれてベッドに雑に投げられる。
男が馬乗りになって、さっきまでドアの近くいたはずの部下達もベッドを囲む。
「抑えてろ」
手足を掴まれて、は身動きひとつ取れなくなった。
そうかと思えば唇に強引に口付けられた。
気が遠くなるほどの酒の匂い。
吐きそうになる舌の動き。
ジンとは違う、何も感じない、ただの性欲処理みたいな行為。
ドレスは強引に破られ、胸を力加減なしに揉みしだかれる。
何本の手が触っているのか分からない。
どこを触られても何も感じない。
気持ち悪くて、そして、怖かった。