第4章 見えない傷
社長はをまずはソファーに座らせた。
ぐだっと体を背もたれに預けたの隣に社長はワインを持って腰掛けた。
「いいワインが入ったんだ。これなら普段飲み慣れていない君でも飲めるだろう」
そう言ってワインが揺れるグラスを渡してくる社長。
酔いを覚ますために連れてきたにしては行動が矛盾しすぎているにも関わらず、社長はやけに自信気で女も分かってこの部屋に来ていたのだとは思った。
は渡されたワインを飲まずにそっとテーブルに置いた。
そして社長の手を優しく握る。
社長はの思いがけない行動に興奮を隠せない様子だ。
「この時計、確かもうすぐ発売される話題の新作ですよね。もう持っているなんて、流石社長さん…」
「ははっ、こんなの大したことないよ。向こうが勝手にくれるだけさ」
社長はわざわざ時計を外してに見せてくる。
はその時計を見ながら、もうそろそろでバーボンの任務が終わる頃だろうと確認した。
「社長さん…ホントはもっと一緒にお喋りしたかったけど、もうすぐパパが迎えに来るから帰らなきゃ」
は社長の手からそっと自分の手を離す。
「そうかい…残念だね
社長令嬢としての君を、もっと楽しみかったよ」
はその発言に瞬時に戦闘の構えを取ろうとするも額に当てられたのは冷たい黒い塊。
目の前の男はカチンッとセーフティを外す。
の頭によぎったのは、今社長室にいるであろうバーボンのこと。
「いつから気づいてたの」
「パーティーの後君に声をかけられた時さ。事前に今日乗り込んでくる輩がいるとは聞いていたんでな。誰かとは思ったがまさか君だとは」
男はニヤリと気味の悪い笑みを浮かべる。
「入っていいぞ」
男がドアの方へ声を上げるとガチャ、と開く音がして3人の男が入ってきた。
流石のも背中にじんわりと汗が滲む。
圧倒的にには不利な状況。
このまま逃げ出すことの方が難しい。
バーボンは…無事なのだろうか
「もう1人のお仲間が心配かい?」
の内心を察したかのように男は尋ねる。