第3章 シルバーブレット
「ああ、で、お前の反応からするとやっぱ組織の人間なんだな、さん」
「…ええ、そうよ」
灰原の肯定を表す言葉に、コナンは険しい表情を浮かべた。
信じたくなかったのだ。
自分を庇ったあの女性が、黒の組織の人間だなんて。
「クソ…」
コナンの小さな嘆きは灰原の耳に聞こえた。
「…工藤君、今からする話は貴方には酷かもしれなけど」
灰原は膝に乗った両手をギュッと握る。
「私、組織にいた頃…彼女には何度も助けてもらったの。
お姉ちゃんが死んじゃった時も、そばにいてくれたのは彼女。
組織を抜け出そうとした時、彼女、私を止めなかった。
私より前から組織にいたけど、彼女には他の組織の人間とは違う何かがあった。
組織の人間らしくなかったの、…優しかったの…」
灰原は言葉を詰まらせた。
コナンは組織の手によって人生を大きく変えられた1人だ。
そんな彼に組織の人間を擁護する言葉はかけてはいけないと思った。
「灰原…、俺が今こうなってる以上、やっぱり組織の人間は許せねぇよ。
どんなにいい人であろうとも、組織の人間ってだけで今までのイメージが簡単に崩れちまう」
灰原はコナンの言葉に唇をギュッと噛み締める。
─シェリー、今の貴方に、こんな場所似合ってないわよ─
─どんなに生きるのが辛くてもね、生きていれば必ず貴方を守ってくれる人に会えるわ。そして貴方にも守りたい存在が出来るはず。その人のために一生懸命生きなさい。絶対ここには戻ってきてはダメよ─
─貴方は…貴方はどうしてここにいるの…!貴女こそこんな場所にいるべき人じゃないわ…!─
─前にも言ったでしょ…ここにいるのよ…私の守りたい人が─
カーディナル…
「でもよ、お前の気持ち分からなくねぇんだ。本当は分かりたくねぇけどよ。」
灰原はハッとコナンの方を向く。
コナンは悔しいような、苦しいような、そんな表情をして灰原を見ていた。
「ここに来る時に何度も思っちまったんだ。あんな人が組織の人間だって信じたくねぇってな」
「工藤君…」
「ベルモットみてぇに何を考えてんのか分かんねぇ奴もいるんだ。少なくとも、まだあの人の立ち位置を独断で決めるには早い気もするしな」
コナンの言葉に灰原はスっと緊張が溶けていくのを感じた。