第2章 不仲
「何をするんですか?」
「それはここに来てからのお楽しみだよ。あえて言うなら君が普段使ってる薬より、何倍も気持ちいい薬を体験できるってとこかな」
「ふふ、楽しみです」
「君が来るのを待ってるよ」
男はにそう告げると指でサインをして会計をすませた。
の分も払ってくれたらしくは安室に視線を向けた。
は席を立って店を出て行った。
「お疲れ様でした」
「思ったより手がかからなかったわ」
「貴方の得意分野ですからね」
「そうでもないわよ」
安室は車を走らせる。アジトに着いてがありがとう、と告げて車を降りようとした。
「スコッチもあの男と同じぐらいの存在だったのか」
車内に響く安室の声。
のドアハンドルにかけた手が、思わず止まる。
「嘘だらけの言葉を吐いて、思い上がらせて、望みが無いことを最初から分かっていて」
楽しかったか?
安室はに視線を送った。安室の青い瞳が、黙ったままのカーディナルを見つめる。
「まだスコッチのこと怒ってたの」
しばらくの沈黙のあとは冷めた目で安室を見つめ返した。
「NOCに情けをかけろとでも言いたいの」
「NOCだとか言う前にお前の人間性を疑いたい」
「私が何か悪いことをしたって言うの?」
「罪悪感も感じないならお前は本当に根から腐ってるんだな」
「いくら仲が良かったからってそんな前のこと引き出して来ないで」
「本当にそんな軽い存在だったんだな」
は安室が言葉を言い終える前に車のドアを開けた。
「今日の男と同じぐらいか、だっけ。
ならこっちからも言わせてもらうけど、騙される方も悪いんじゃないの」
そう告げては扉を閉めた。
1人残った車内で安室はダンっ、とドアを叩いた。
怒りと憎しみと憎悪が溢れ出しそうだった。
「スコッチ…俺はアイツを許せないよ」
静かな車内にその呟きは消えていった。
「戻ったわ」
一方は男から仕入れたカードをベルモットに渡した。
「やっぱりあのバーで会員を増やしてたのね」
「ええ、結構慣れてる感じだったわ」