第9章 伝授
「疲れた……」
「あ、あの……」
「なに?」
櫻井さんの、吐く息が、耳に当たる。
私は耳が、弱いらしい……。
くすぐったくて、でも、どいてなんて言えない。
「座ります?」
「嫌だって言ったら?」
「こ、このままで」
「ハハッ……じゃあ、嫌だ」
更に肩に力を入れられて、
ちょっと苦しいくらいに抱きしめられて。
私の鼓動が、櫻井さんに
伝わっているような気がする。
男の人に、こんなに強く抱きしめられたの
初めてだから……。
櫻井さんの鼓動も、感じてる。
櫻井さんはまだ、息が上がってる。