第7章 接近
櫻井さんの顔から赤が消え始めた頃
咳払いをした櫻井さんが語り始めた。
私は下を向く櫻井さんをじっと見て聞いていた。
また見てしまった、この、どこか切ない表情を。
「相談って、わけじゃないんだよね」
「なんか、俺だけ中途半端だと思ってさ。
皆彼女いたり夢中になれることがあったりで
幸せなんだと思うんだよね。
もちろん、俺も幸せだけどさ、
プライベートが、コントロールできなくて」
そこで口を閉じたのは、ウーロン茶が
運ばれてきたからだった。
一口口にしてから、黙ってしまった櫻井さん。
表向きは、本当にくだらない悩みだと思う。
けど、裏ではすごく悩んでいて
心配なんだろうな、櫻井さん。
私は名言も何もわからない。
唯一知ってるのは吾輩は猫であるの
『名前はまだない』だけなんだよね、アハハ。
でも、可愛いくらいに悩む彼を
どうもほうってはおけなかった。