第1章 何が起きた
受話器を持って自宅の電話番号を押す、しかし受話器から流れるのは呼び出し音ではなく、現在使われていないというアナウンスだった。
一度受話器を戻し再度同じ動作をするも、やはり聞こえてくるのは使われていない、という音声。
自宅の電話が壊れてしまったのか、番号は間違えていない筈だ。
ならばと思い外部用の番号を入力する。
やはり繋がらない。
「ご家族と連絡は取れそうか?」
「…すみません、繋がらないみたいです。もしかしたら電話が壊れてしまったかもしれないです。あの、先程の部屋に戻っても大丈夫ですか?親の携帯に電話してみようと思うのですが、番号が見ないと分からないので…」
夜蛾さんは、そうか、と言い先程まで居た部屋に戻ってきた。
画面をつけてそのまま電話をかけようとしたら圏外になっていた。
電話帳から家族の電話番号を出してにメモに書き出し先程の部屋に戻り電話を借りる。
しかし誰一人繋がる事は無かった。
「…電話が繋がらないみたいなので、このまま家に帰ろうと思います。すみませんが、最寄駅迄の道を教えてもらえませんか?」
「もし良ければ、こちらで車を出すから乗っていきなさい。手配するのに少しかかるからちょっと待っていてくれ。」
「その間に食堂連れてくよ。何か食べさせてくる。」
夜蛾さん頼む、と言って部屋を出て行った。
「不安かもしれないけど、とりあえず飯だな。フラフラで帰ったら余計に心配するだろ。」
「ごめんなさい、本当にご迷惑おかけしちゃって申し訳ないです。」
「謝らなくていいよ。こういうのも仕事のうちだから。」
着いておいで、と言って前を歩く家入さんを追いかける。
お腹は空いてるし、電話も繋がらないからどうしようもない。
お言葉に甘えさせてもらおう。
帰ったらたくさん怒られるだろうけど…