第3章 夢じゃなかった
硝子さんが私の腕を覗く。
私も同じように刺された場所を見るが血が出ていない。
「反転術式か。傷が小さいとはいえ効果が早いな。」
「これ、私のより強いんじゃない?」
「…調査してからだな。」
「紫亜、腕変な感じする?」
「いえ、刺された時は確かに痛かったんですけど、針が抜けてからは痛みが無くなりました。」
「とりあえず採血の後だから少しゆっくりしてから次の検査お願いしますね。」
そう言ってお医者さんは部屋から出て行く。
硝子さんと夜蛾さんは、まだ難しい顔をしていた。
少ししてから、更に奥の部屋に移動する。
「とりあえず、呪力量のチェックをする。これを。」
渡されたのは透明な箱だった。
「側面を持って少し手に力を入れてくれ。変化する色で呪力量を測る。」
言われた通り側面に手を当て力を入れると透明だった物に色がつき始める。
一分弱くらいそれを続けると青い箱に変化した。
「青か、呪力量は平均だな。次は呪力操作だ、その箱の周囲を呪力で覆うイメージで同じ様に呪力を放出して欲しい。」
箱を覆い、言われた通りイメージして力を込める。
呪力は見える物だと言われたが、自分では全く見えない。
出来てるのか全く分からない。
「呪力操作は出来ないか。術式は使えてるんだがな…」
出来てなかった、らしい。
呪力が出てる感覚が先ず分からない。
「元々、呪力も呪霊も知らないんだから当然だよ。」
「そうだな、呪力操作が出来ない以上は術式がどれだけ扱えるかも調べられないからな…仕方ない。霧乃さん、此処にいる間三人と授業を受けて欲しい、そこで呪力操作を教える。呪霊が見えてる以上、対処法は知っておいた方が良い。出来る様になったら再検査だ。」
「授業、ですか?」
「授業では呪術に関する事以外も一般の授業もある。中学生用の教材はこちらで準備するから、普通の学生として過ごしてくれないか?元々伝えていた一週間、調査結果次第ではそれ以降も。」
夜蛾さんは申し訳無さそうに頭を下げる。