第3章 夢じゃなかった
「君の証言を証明する物はないと言う事だな。」
「…そうなります。」
「君は1990年10月31日生まれで間違いは無いか?」
え?どういう事だ。
訳がわからず硝子さんを見る。
何故かニヤリと笑う硝子さん。
夏油さんも五条さんも同じ様笑っている。
「紫亜、信じて。大丈夫だから。」
「もう一度聞く、間違い無いな?」
「…間違い、無い、です。」
未だに意味が分からないが、頷く。
「よし、お前ら分かってるな?」
夜蛾さんの言葉に、三人がそれぞれ返事をする。
何が分かったんだろう。
私だけが何も分からないまま話が進む。
「これは肌身離さず持ち歩きなさい。」
スマホを渡され、分かりました、と言ってポケットにしまう。
「検査まで時間があるから、ここでゆっくりしていて構わない。悟と傑は授業だから、とっとと行け。」
「こんな時くらい授業見逃せよなー」
「いいから、行くよ。」
三人が部屋から出るのを見ていたら硝子さんが手を握る。
「大丈夫?」
「まだ、ちょっと受け止めきれないと言いますか…何と言えばいいか…あ、あのさっきの夜蛾さんの言ってた事って…」
「…そうだよね。あぁ、それは…きつい事言うけど聞いてくれる?」
硝子さんは神妙な顔をする。
「ここの上の連中、腐ってる奴等ばかりでさ。今回みたいな、その…"得体の知れない何か"っていうのに弱いんだよね。今回保護もしくは処刑って話したけど、上の連中は処刑を望んだ筈だ。夜蛾センが上手い事言って保護にしたんだ。まぁ、紫亜が保護を拒否したら如何にもならない話ではあったんだけどね。ただ、そんな状況で今日の話を明るみにするのは流石にヤバいから、まぁ無い物なら作れば良いって話。」
「…それって、バレたら大変な事になるんじゃ…」
「大丈夫、そんなヘマしないよ。」
「…あの、どうしてそこまでして優しくしてくれるんですか…?」
そこなのだ、どうしてこんなに優しくしてくれるのか。
助けて貰って失礼な質問をしているのは分かっている。
私の為に沢山の事をしてくれている。