第3章 夢じゃなかった
先程と同じ様にスマホを出してカレンダーを開く。
皆に見える様にテーブルに置く。
「…整理しようか。確かに私達はスマホもガラケーという言葉も知らない。駅やお店に違いは無いけど、買った服の中で見た事ある物があった。」
「紫亜、検査で聞くつもりだったけど生年月日は?」
「2002年の10月31日生まれです。身分証を持ち歩いてないので証明は出来ませんが…」
「本来なら2歳か…」
「術式か?そんな術式聞いた事もないけど、あったとしても無茶苦茶すぎる。」
「仮に術式だとしても、昨日の時点で明らかに可笑しい。家も学校も存在していないんだ。」
全員が頭を抱える。
すると、めんどくさそうに五条さんが口を開く。
「…夜蛾セン、これ上に報告すんの?」
「報告義務はあるが、内容に整合性が無さすぎる。」
「このまま上に報告したら、上の連中が黙ってらんねーぞ。」
どういう意味だろうか。
そうだ、保護もしくは処刑だ。
私は今この人達に守られているんだ。
昨日の五条さんの含みのある言葉を思い出す。
上の連中相手によくやった。
本当は私は保護されるべきでは無かったのでは?
私が現れたあの日、天元様の結界を破った、皆口々に言った。
本来なら破られる事はない物だと聞いた。
それを破った上に身元不明だなんて得体の知れない人間を置くなんて。
本当は許されないのでは…?
「…紫亜、大丈夫?」
俯いて黙りこくる私を心配そうに覗き込む硝子さん。
はっとして顔を上げるも何と言って良いか分からず、声が出ない。
「…先生、この事を上に報告しないって事は?」
「それは…だが、霧乃さん身分証がないと言ったね?君の所持品に、そのスマホという物以外に此処にはない物はあるか?」
そう聞かれ鞄の中身を思い出す。
塾の帰りだったから塾で使う教材と文房具ぐらいしか持っていなかった筈だ。
特に日付け等も入ってない物だし、お財布にも現金くらいしか入っていない。
「…無い、です。」
その返答に夜蛾さんが溜息を吐く。