第3章 夢じゃなかった
「…んー、何時だ…」
もぞもぞとスマホを探す。
6時、朝ご飯のお手伝いしなきゃ、と思いベッドから出ようとする。
「…夢じゃなかった。」
自分の部屋とは違う部屋。
起きたら夢であれ、と思っていた訳ではなかったが現実なのだと突きつけられる。
「とりあえず、顔洗って…制服は流石に洗わせてもらおう…砂埃で汚れちゃったな。」
昨日買った服を広げる。
夏油さんが選んでくれたカジュアルなワンピースを手に取る。
「あんまり着ないタイプの服だから、ちゃんと似合ってるかな…」
鏡の前で何度も確認する。
学校なのに私服を着ているという事に違和感が拭えない。
一通り支度が終わり共有スペースに向かう。
ソファに座りスマホを弄りながら誰かが起きてくるのを待つ。
「おはよう、早起きだね。選んだ服着てくれたんだ、似合ってるよ。昨日はよく眠れたかな?」
「夏油さん、おはようございます!ありがとうございます。恥ずかしながら怖い夢見て起きちゃったんですけど五条さんが来てくれてその後はぐっすり眠れました。」
「悟が?…それは面白い話だね。どんな夢だったんだい?」
「えっと、真っ白な部屋に私だけしか居ないのにずっと声が聞こえるんです。動こうとしたら引っ張られて真っ暗になっちゃって…それでびっくりして起きたんですけど…」
「…そうなんだ、でも悟が来てくれて良かったね。」
「そうなんですよね。五条さんが来てくれなかったら怖くて朝まで起きてたかもしれないです。」
昔はよく兄の布団に潜り込んでたんですけどね、と笑いながら答える。
この歳になっても怖い夢で寝れないなんて恥ずかしい、と思っていると夏油さんがじっと見ている事に気付いた。
「何かついてますか?」
「いや、こっちだと怖いとか悪い夢の場合は呪いの場合があるからね。」
「…え。私呪われてるんですか…?」
「大丈夫だよ、呪われてないから。」
「見てわかるんですか?」
「まぁ、それが仕事だからね。」