第1章 何が起きた
先程とは違う応接室の様な部屋に入る。
中には夜蛾さんだけだ。
目が合うと座ってと言われたので言われた通りに座る。
夜蛾さんが向かい側に座る。
家入さん達は壁に寄り掛かり立ったままだ。
「すまないが、書いてもらった住所に間違いはないか?」
先程書いたメモを出されて、それを見る。
確かに私の家の住所だ、間違いはない。
「何これ、ここの住所じゃん。」
後ろから白髪の人が覗き込み言う。
ここの住所?
そんな筈はない。
今日は同じ事ばかり言っている様な気がする。
電話は繋がらず住所もここのだと言われるなんて。
「あの、ここの住所って…」
聞くと夜蛾さんが発したのは私の家の住所だ。
理解が追いつかない。
私の家は何処にいってしまったんだ。
「少し君の事を調べさせてもらった。君の学生証から学校も調べたが存在しなかった。君の言う家も存在しない。」
「どういう、事ですか…?」
夜蛾さんから言われた事が衝撃的すぎて理解出来ない。
本当に意味が分からない。
いつもの塾の帰りに化物に追われた時点でおかしいのだが、学校もない家もないとは。
「すまないがこちらでも何も分からなかった。逆に問う。君は何者だ?」
「わ、私は…護迦神社の娘で…!あ、神社は、護迦神社はありますよね…?守護の護にお釈迦様の迦で護迦神社です。」
そう伝えると、夜蛾さんはパソコンを起動させる。
しかし表情は硬いままだ。
「…そのような神社は出てこないな。」
そんな、と開いた口が塞がらない。
自分の身に何が起きているのか意味が分からない。
「何、どういう事?」
白髪の人が横から声をかけてくる。
何も言えず夜蛾さんの顔を見るが、夜蛾さんも溜息を吐くだけだ。
「あ、の…私はどうしたら…」