第13章 血のイブ
大きな歓声が響く中、最初の曲を始めようとしたとき...
その歓声はすぐに悲鳴へと変わった...
他のバンドの人たちがステージに乱入してきたからだ。
自分の彼女が千の事を好きになって、でも千に振られたせいで田舎に帰ってしまったと文句をつけて怒鳴っている。
千は覚えてないし関係ないと言った。
「こいつのこと好きなんだろ!だからあいつを振って傷つけたんだろ?」
ターゲットが千から私に代ると、千と万が庇うように前に立ってくれた。
今にも私の手を引き連れ出されそうになったその時、Re:valeを庇うように颯爽とステージに上がってきた人がいた。
まるで、ヒーローのような登場だと思った。
「百・・・」
僕の後ろから七桜の声が聞こえた...百って?
ヒーローは乱入してきて殴りかかろうとしてくる奴らをボコボコにしている。
あまりにも手加減なしで殴ってるから、唖然として見ていたけど慌てて万と2人で止めに入った。
「キャプテン」
「キャプテンだったのか・・・」
「へ?」
彼はキョトンとした顔をしてそう言った。
その後のライブはもちろん中止になり、問題を起こした奴らは病院送りになり、お客さんもみんな帰らされた。
七桜は楽屋からハンドタオルを濡らして持って来て、キャプテンに渡そうとしていた。
でも、キャプテンは遠慮して中々受け取らない。
しびれを切らした七桜が自分で顔や手についてる血を拭き始めると、顔を真っ赤にしてタオルを受け取り拭き始めた。
なんか距離近すぎない?
そんな近くにいないでよ...その場所は僕の場所だ。
イライラで心が黒いモヤに支配されそうだ。
これは...僕は今キャプテンにヤキモチを妬いているのか...
こんな気持ちになるのも初めてで、勝手にライバルだと認識してしまう。
万と七桜はありがとうとキャプテンにお礼を言っていたけど、僕はこの感情に戸惑ってしまいそれを見てることしかできなかった...
ライブハウスの人に呼ばれてキャプテンはその場を離れた。
「まるで狂犬のようだったね」
僕がそう言うと、万があだ名をキャプテンから狂犬に変えようかと笑って話す。
「やめなよ。ちゃんと名前あるんだから」
「そうだな。後で聞こう」
名前...確か、七桜は百って言ったよね...