第48章 百の声
Re:valeさんとTRIGGERに挨拶をして、俺たちは事務所に戻った。
七桜さんには連絡を入れておく。
『元相方さんですが、私たちも手掛かりがないか探してみます』
と連絡が来たけど...元相方さん、あなた達の事務所にいるんですなんて、今更言えない...
とりあえず、今は百だ。今日も歌えなくて、落ち込んでいる。
「百、今からちょっと出掛けようか?」
「今から?」
「そう。うち、運転してもいい?」
「それは、いいけど・・・」
早速、百の今の気分に合いそうなハーブティーを選んでポットに入れ準備をする。
百を助手席に乗せて車を走らせる。百は窓から景色を黙って眺めていた。
私が連れて来たのは、海。
前に、私が落ち込んだ時に百が連れてきてくれた場所。
「行こ?」
荷物は百が持ってくれて、浜辺をゆっくりと歩く。
「季節的にちょっと寒かったね・・・」
「でも、気持ちいいよ。こうして手繋いで歩けるし」
手を繋いで少し歩き、持って来たハーブティーを座って飲むことにした。
「はぁ・・・これ、すごい落ち着けるし、美味しい」
「レモンバームって言うんだよ。不安とか緊張してるでしょ?悩んでるから精神的にも弱ってる・・・今の百に飲んで欲しいなって思って・・・」
飲んだからって解決できはしないけど...
「七桜はなんでもわかっちゃうんだね・・・レモンバームって言うんだ。ハーブティーって色んな効果あるの?」
「色々あるよ。風邪とか、胃腸の不調とか。どれもリラックス効果はあるけどね」
七桜は色々詳しい。紅茶とかも色んな種類揃えてる。
ただ好きってのもあると思うけど、健康とかリラックスとか俺のことも考えてくれてるのかなって思えるから嬉しい。
波の音が心を落ち着かせてくれる。
「連れてきてくれてありがとう。俺、まだ焦ってたのかもしれない。どうすれば歌えるようになるのか、わかんないからさ・・・焦るのが1番よくないって言われたのにね・・・」
「焦るから余裕もなくなっちゃうんだよ。百の声が戻るまで、ちゃんと待ってるよ?千と一緒に。百のとこ置いてったりしないから」
七桜もユキも、俺のこと考えてくれてる...
置いていかないで、ちゃんと待っててくれるってわかってたことじゃん...迷惑かけたくない、そればかり考えてた。