第48章 百の声
「ありがとう・・・俺、嬉しい・・」
嬉しくて、涙が出始めてしまった。
「泣きたくても泣けなかったよね?気付いてあげられなくて、ごめんね・・・」
声を出して泣く百を、そっと抱きしめる。
こっちまで泣けてくる...ごめんね...
「七桜・・・」
名前を呼びながら泣き続ける百の背中をさすってあげる。
どれくらいそうしてたかな...
泣いていた百も落ち着いて、ずっと抱きついている。
「七桜・・・落ち着いたら、結婚しない?」
「えぇっ!?」
まだ先だと思ってたから、突然の事にビックリしてしまう。
「俺が歌えるようになったらじゃなくて、こけら落としも終わって一通り仕事も落ち着いたら。俺ね、今回の事があって前よりもっと、もっと好きになったし、俺にはやっぱり七桜が必要だなって改めて思ったんだ。俺の人生には七桜が必要だって。こんなに大事にしてくれるし・・・俺も、もっと大事にしていきたい・・・どうかな?」
前から考えてはいたこと。別に急いでるわけじゃない。
「まだ先の話だと思ってたから、今のタイミングで言われるとは思ってなかったな・・・けど、しよっか。結婚・・・」
「そうだよね。まだできな・・・って、うぇっ!?」
「なんで言った本人がビックリしてるの?」
おかしくて笑っちゃう。
「だ、だって、突然だしまだ早いからダメって言われると思ってたから・・・まだ先の話だと思ってそうだったし」
「確かに、まだ先だとは思ってたけど。いつかはするんだし、こういうのはタイミングってよく聞くでしょ?」
「あっ!でもまだ指輪買ってない!大っきいダイア付いてる婚約指輪買ってあげるね!」
「別にいいよ。婚約指輪なんて普段着けないんだから」
「えぇー!ダメだよ!絶対買うから!今度一緒に選びに行こ?」
「その前に、おかりんの許可もらってからね?」
「そうだった・・・おかりん・・・」
そう言った百が、大きなクシャミをした。
「うぅ~、さすがに寒くなってきたね。帰ろっか?帰りは俺運転するよ」
「いいよ。今日はうちが運転するから、百は隣に乗ってて」
来た道を戻って、車に乗り家に帰る。
「寒かったから、早くお風呂入ろう?」
「先入ってて?ポット洗ってから行く」
「わかったー!入浴剤選んじゃうからねぇ?」