第45章 デビュー
「監督と脚本家相手にあそこまで言うとは、さすがだね」
「こっちはやるとこたっくさんあるの・・・はぁ、泣きたい・・・」
そう言ったら本当に涙が出てきた。
百が慌てて、「あぁぁっ!」と言って慰めてくれる。
「にしてのも、主人公を想ったまま死んでしまう彼女の歌ね・・・」
「まぁ、なんとかなるよ。そういう漫画結構あるし。アルバムしばらく手伝えないけど、ごめん。うちも思いついたら考えるから。ちょっとギター弾いてもいい?」
そう言って、アコギを取り出して、なんとなくコードを引いてメインのメロディーを弾く。たぶん、うちの作曲がスムーズに進むのは前世の記憶が関係してる。
今の時代に存在しない人達の曲。好きだったと思う音楽や歌手。はっきり覚えてるわけじゃないけど、コードを弾くと自然と出てくる。パクリじゃなくて、参考にしてるって言っておこう...少し、楽譜に落としながら適当に歌ってみる。
2人は黙って聞いてくれてる。
「七桜、今の曲って・・・」
「うん、これにする。歌詞も大体頭に入ってるから、起こすだけ」
「凄いよ!こんなに短時間でできるなんて!」
「まだ、出来上がってないよ。アレンジしないと」
今の曲は、離れてから自分がどれだけ思っていたか、後悔してる歌だ。いなくなってから好きだと、愛してる、会いたいよって言うけど、聞こえてるかなって聞いてるといいなって思う歌だ。これなら文句ないだろう。
「うち、先帰るね。出来上がったらうちも合流するから!ちゃちゃっとやってきます!」
そう言って家に帰り、防音室に隠る。
「モモ、あとで七桜のとこ行ってあげなよ。きっと朝までやるからご飯も食べないでやると思うよ」
「そうだね。終わったら様子見に行ってくるよ」
七桜の家に入ると、思った通りリビングにも寝室にもいなかった。ご飯食べた形跡もなし。防音室に向かうと、パソコンに音入れして曲を作ってる七桜がいた。
集中してるから、今は声かけないでおこうと思って、買ってきたご飯を温めたり、スープ温めたり準備しておく。
冷めないうちに...って思って防音室を覗くと、一息ついてたから、声をかけた。
「七桜、お疲れさま」
「百っ!ビックリした・・・いつ来たの?」
「少し前。集中してたから声掛けなかった。ご飯買ってきたから食べよ」