第34章 バレンタインデー
「七桜、まだ知らないの?」
「音楽関係の仕事してるのは知ってるけど・・・何?違うの?」
「いや、音楽関係で合ってるよ」
結局はぐらかされて、なんなのかわかんなかった。
まぁ、知らなくてもいいこともあるよね。
でも、1人暮らしの時期って今だっけかな...?
確かにJIMA、ブラホワ優勝の後だったけど。
百が月雲のせいでベランダから落とされるとかあの事件は絶対嫌だ。
声が出なくなるのも避けたい。
そう思って、打ち合わせの会議室に向かおうとすると千に話しかけられた。
「モモと付き合ったって聞いたよ。よかったね」
「うん・・・恥ずかしいからそういう事わざわざ言わないでくれる?」
「だから言ってるんでしょ?」
「うわぁ、最悪・・・」
「照れてる七桜も可愛いからついね」
「今は照れてない!呆れてんだよ・・・」
「まぁまぁ。僕はいつか諦められるから。モモに大事にしてもらいなよ。モモなら大丈夫だと思うけど。もちろん、僕も大事にするけどね」
「ちょっとぉー!ユキ、なに七桜に言ってんの?もう七桜はモモちゃんのなんだから!」
少し怒ったようにふざけて百が言う。
「別に取ったりしないよ。おめでとうって言ってただけ。取ってもいいなら遠慮なくもらうけどね」
「それはダメー!」
「百くん千くん、七桜さん先に行きましたよ。それと、お付き合いするのはいいですが、絶対にバレないように!いいですか?変装大事!守ってください!」
「わかってるよ!」
行きますよと会議室に向かう。
「ねぇ、おかりん。凛太郎って昔音楽やってたの?」
「社長ですか?・・・あぁ、確か高校生の時友達とバンド組んでやってましたね。少しの期間でしたけど」
「へぇ、そうなんだ」
部屋に入ると、モモは七桜の隣に座ってホワホワと嬉しそうにしていた。
「モモ、顔緩みすぎてるよ」
「えっ?嘘!?」
慌ててキリッとした顔にして、それが可笑しくて笑ってしまった。
ライブの打ち合わせでも白熱した言い合いが繰り広げられる。
七桜は撮影の時間だからと先に出て行ってしまった。
あの事件以来、七桜が1人だけの仕事はおかりんが必ず着いて行くと事務所で決まりができた。
また何かあったら危ないし、何より遥人さんが怖いからだ。