第3章 決定的な出会い
今日披露する曲は少し難しい。
曲自体もそうだけど、テクニック的な面でも不安がある。それでも、今までたくさん練習してきたし、自信を持って弾こう!
大丈夫、今のところ失敗もしてないし、順調に弾けてる。プレッシャーは感じるけど、千と万が見ているってことだけは意識しないようにしよう。
ライブが始まったら、弾くことに集中するだけだ。
最後に披露するのは私がアレンジした曲。その歌も私が歌うことになっている。路上では歌っているけど、ライブハウスで歌うのは本当に珍しいこと。
それを楽しみにしてきてくれた人がいるのは嬉しいけれど、同時に恥ずかしさもある。でも、楽しんでほしいし、自分も楽しみたい。その気持ちが大きくて、緊張も失敗の不安も消えていく。
メンバーに紹介されて、ステージの真ん中に立つ。マイクの前で、カウントが始まり、ドラム、ベース、ギター、そして私のギター音が重なる。
この瞬間が好きだ。
普段、歌うことは少ないけれど、他の音に自分の声をのせて歌うのは気持ちがいい。歌っているときに、ホールを見ると、視界に千と万が入った。
2人は、何か驚いた顔で私を見ている。え、ビックリすることなんてあったかな?それとも、変なことをしちゃった?
せっかく集中できてたのに、一気に集中力が乱れ、ギターをミスってしまう。慌ててアレンジで誤魔化し、その場をなんとかしのぐ。
(みんなにはバレてるだろうな…あぁ、後で言われちゃうな)
ステージに立って歌うことで、普段とは違う自分になれる。音にのせて、自分の想いを伝えるのが心地よくて、歌うことで言いにくいことも伝えられる気がする。
「ありがとうございましたー!」
すべての曲を終えて、私たちは楽屋に戻る。
「七桜ちゃん、さっきのギター、アレンジで誤魔化したでしょ?」
「やっぱりバレたか…」
「でも、あれはうまくハマってたんじゃない?イケメン2人もすごくビックリして見てたよね」
「うん、目立ってたよね、あの2人。七桜ちゃんも見た?」
「あぁ、うん。あれだけ目立ってたら、目に入るよね」
私の演奏を聴いて驚いたんじゃないかと言われたけど、そんなことないだろう。今日は色んな意味で疲れたけど、充実感もある。